著者の所属・活動拠点の国は、デンマーク、ギリシャ、フランス、ポルトガル、ベルギー、スウェーデン、ハンガリー、アメリカ、中国です。

掲載誌:Nutrition Journal

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

環境への負荷が小さく、健康にもよい「持続可能な食事」への関心が高まっています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)を背景に、食生活の見直しを政策に取り入れる動きもあり、各国の食事指針に持続可能性の観点を加える機関も出てきました。

ところが、どのような食事を「持続可能」と呼ぶかは研究ごとに異なり、健康への影響を測る方法もさまざまです。そのため、研究結果どうしを比べたり、まとめたりすることが難しくなっています。研究チームは、持続可能な食事パターンが研究の中でどう定義されてきたか、そしてそれと結びつけてどのような健康影響が数値で調べられてきたかを明らかにするため、既存研究を幅広く整理するスコーピングレビューを行いました。スコーピングレビューとは、ある分野でどのような研究が、どのような方法で行われているかの全体像を把握するための文献調査です。

何を調べたか

研究チームは2023年11月24日に、PubMed、Web of Science、Scopusという三つの論文データベースを検索しました。対象としたのは、「持続可能な食事」という言葉が初めて提唱された1986年以降に発表された研究のうち、一般の人々を対象とし、著者らが環境面で持続可能とみなす食事パターンを定義したうえで、それに関連する健康影響を数値で示したものです。総説(レビュー論文)は除外しました。

疫学、栄養学、食品安全、公衆衛生などの専門家23人が参加し、二人一組で互いの判断を見ずに論文を選別・情報抽出し、意見が分かれた場合は第三者が判断しました。各研究の食事パターンの定義、調べた健康上の結果、研究デザイン、対象地域などを記録し、食事パターンの定義は内容の具体性に応じて九つのグループに分類しました。

主な結果

重複を除いた10,051件の文献から、条件に合う97件の研究が選ばれました。このうち約8割(78件)は高所得国の人々だけを対象としており、多くは北米と欧州の研究でした。低・中所得国だけを対象とした研究は9件(中国6件、メキシコ2件、ブラジル1件)にとどまりました。また、該当する最も古い研究は2011年のもので、その後研究数は急増し、約8割が2019年より後に発表されていました。

持続可能な食事の定義は研究ごとにばらつきがあり、研究間で一致していないことが多いと報告されています。最も多く用いられていたのは、EAT-ランセット委員会が提唱した「プラネタリー・ヘルス・ダイエット(地球の健康に配慮した食事)」でした。低・中所得国の研究では半数がこの食事パターンを参照しており、高所得国の研究(23%)より割合が高くなっていました。多くの食事パターンは、普段の食事と比べて肉をはじめとする動物性食品を減らし、植物性食品を増やすものでした。

研究の方法としては、既存のデータをもとに健康への影響を推計する予測モデル研究が44%(43件)、人々の集団を長期間追跡するコホート研究が41%(40件)、ある時点の状態を調べる横断研究が11%でした。予測モデル研究で使われた「食事と病気のリスクの関係」のデータの出どころもさまざまで、世界疾病負担研究(GBD)のデータを使ったものが約44%(43件中19件)、独自に行われたメタ解析のデータを使ったものが約23%(同10件)でした。

調べられた健康上の結果は、主に心臓病や脳卒中などの心血管疾患、がん、2型糖尿病といった非感染性疾患(生活習慣病など)に集中しており、最も多かったのは心血管疾患(27%)でした。障害調整生存年(DALY)のように病気による健康の損失を一つの指標にまとめる方法は、比較的少数の研究で使われていました。

この研究が示すこと

著者らは、持続可能な食事と健康の関係を調べる研究が急速に増えている一方で、食事の定義がそろっておらず、研究対象が高所得国に大きく偏っていること、さらに予測モデルに使う疫学データにも標準的なものがないことを指摘しています。こうした状況は、研究どうしの比較を難しくしていると著者らは述べています。

論文は、世界全体で持続可能な食事の意味をよりよく理解するには、定義の統一や標準的なデータ源、透明性のある報告が必要であり、特に低・中所得国で、それぞれの文化に合った食事パターンを調べることが求められると結論づけています。

著者:Anna E. Jacob(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Constanza De Matteu(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Kyriaki Apergi(Department of Hygiene, Epidemiology and Medical Statistics, School of Medicine, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece)、Géraldine Boué(Oniris, INRAE, Nantes, France)、Catarina Carvalho(Faculty of Medicine, University of Porto, Porto, Portugal)、Aleksandra Davydova(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Michiel De Bauw(Sciensano, Brussels, Belgium; KU Leuven, Louvain, Belgium)、Claire Dénos(Sciensano, Brussels, Belgium; Ghent University, Ghent, Belgium; Université Libre de Bruxelles, Brussels, Belgium)、Hanna Eneroth(Swedish University of Agricultural Sciences, Uppsala, Sweden)、Hernan Gomez Redondo(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Lea Sletting Jakobsen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Marianne Uhre Jakobsen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Carla Martins(NOVA National School of Public Health, Public Health Research Centre, Comprehensive Health Research Center, CHRC, REAL, CCAL, NOVA University Lisbon, Lisbon, Portugal)、Androniki Naska(Department of Hygiene, Epidemiology and Medical Statistics, School of Medicine, National and Kapodistrian University of Athens, Athens, Greece)、Erika Országh(Syreon Research Institute, Budapest, Hungary)、Morten Poulsen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Juliana Martins Ruzante(RTI International, North Carolina, USA)、Sofie Theresa Thomsen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Stefanie Vandevijvere(Sciensano, Brussels, Belgium)、Hans Verhagen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)、Yibaina Wang(China National Center for Food Safety Risk Assessment, National Health Commission of the People’s Republic of China, Beijing, China)、Andrea Zentai(Syreon Research Institute, Budapest, Hungary)、Sara M. Pires(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lyngby, Denmark)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anna E. Jacob, Constanza De Matteu, Kyriaki Apergi, et al. Sustainable dietary patterns and their associated quantitative health impacts: a scoping review. Nutrition Journal 2026-10-15. DOI: 10.1186/s12937-026-01334-6. 原著ライセンス:CC BY.