この研究は、スペインの研究機関の研究論文です。

掲載誌:BMC Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

摂食障害は、食事のとり方に異常が生じ、苦痛を伴う考えや感情を伴う深刻な精神疾患です。著者らによると、摂食障害は思春期に多い慢性疾患の一つで、治療後も症状が残ったり慢性化したりする患者が少なくありません。発症や長期化には、遺伝や脳の働き、心理的な特徴、幼少期の経験、社会的な痩せ志向など、さまざまな要因が関わると考えられています。

近年注目されている要因の一つが「腸脳相関」です。腸内細菌やその代謝物と脳が互いに影響し合い、食欲やエネルギーの調節に関わるという考え方です。成人の神経性やせ症の患者では、腸内細菌の多様性が低いことなどが複数の研究で報告されてきました。ただし著者らは、こうした研究は対象の年齢や病気の期間、規模がまちまちで、特に子どもや思春期の患者を対象とした研究はまだ少ないと指摘しています。

そこで研究チームは、初めて摂食障害を発症した子どもと思春期の患者と、年齢や性別、社会文化的背景をそろえた健康な子どもとを比べ、腸内細菌の構成や細菌に関連する代謝物に違いがあるかを調べる研究を計画しました。あわせて、心理的な特徴、食事の傾向、腸内細菌、ホルモンや炎症に関わる指標の関連を調べ、摂食障害の成り立ちについて仮説を立てることを目指しています。本論文はその研究計画(プロトコル)を示したもので、研究の結果はまだ報告されていません。

誰を対象に、何を調べるのか

患者は、スペインの小児病院の摂食障害専門ユニットで、精神科医により新たに診断された7歳以上18歳未満の子どもです。対象となるのは、神経性やせ症(食事制限型、過食・排出型)、回避・制限性食物摂取症、その他の特定される摂食障害の診断を受け、初発または症状が出てから1年未満の患者です。比較対象となる健康な子どもは、病院の担当地域にある公立・私立の学校を通じて募集されます。最近の抗生物質の使用や、結果に影響しうる持病がある人などは対象から外されます。

調査内容は多岐にわたります。面接や質問票で、病歴、出生時の状況や授乳、幼少期の抗生物質使用、ペットの有無といった幼少期の経験、摂食障害の症状、不安や抑うつ、性格などの心理面を調べます。食事については、前日に食べたものの聞き取りや、過去1か月の食品の摂取頻度を尋ねる質問票などを用います。身長や体重、体組成も測定します。

生物学的な検査としては、便を使って腸内細菌の構成と働きを調べます。ここで用いる「ショットガン・メタゲノム解析」は、便に含まれる微生物の遺伝子をまとめて読み取り、どの微生物がどれだけいるか、どんな機能を持ちうるかを推定する方法です。さらに、空腹時の血液と便で、腸内細菌が食物繊維などから作る短鎖脂肪酸、神経伝達物質、食欲を調節するホルモン、炎症の指標などを測定します。治療を受けた患者のうち同意した人については、1年後に再び腸内細菌や血液の指標などを調べます。

計画の主な内容

研究チームは、成人の神経性やせ症の研究で報告されてきた差の大きさを参考に、患者群と健康な群をそれぞれ79人ずつ集める計画を示しています。主な目標は、患者の腸内細菌の構成が健康な同年代と異なるかを確かめることです。

副次的な目標として、治療前の食事パターンや症状の程度が腸内細菌の構成や働きと関係しているか、腸内細菌の特徴が食欲や報酬系、代謝の調節に関わる血液中の指標と関係しているかを調べます。また、治療前の腸内細菌の特徴と、1年間の体格指数の変化や症状の回復との関係を調べ、経過を予測する手がかりや、病気が長引く要因についての仮説を探る予定です。

著者らは、子どもの患者は成人の患者に比べて病気の期間が短く、体内の変化がよりそろっている可能性があると述べています。また、健康な子どもの腸内細菌や各種指標について、スペインでは十分なデータがなく、対照群のデータそのものも貴重な資料になるとしています。一方で、診断の種類や性別ごとに分けた分析では、人数が足りず統計的な力が不十分になるおそれがあることを限界として挙げています。

この研究計画が示すもの

この論文は、子どもと思春期の摂食障害について、心理、食事、腸内細菌、ホルモンや炎症の指標を一つの研究でまとめて調べるための枠組みを示しています。発症から間もない未成年の患者は研究の対象として集めにくく、著者らはそうした患者を対象とする点をこの研究の主な強みとしています。

著者らは、食欲の調節や報酬系、エネルギーの調節といった仕組みと、そこに腸内細菌が果たす役割を理解することが、一人ひとりに合った治療の設計を進める助けになりうると述べています。腸内細菌と摂食障害の関係が子どもでどのように現れるのかは、この計画に基づく今後の結果によって明らかにされることになります。

著者:Esther Nova(Department of Metabolism and Nutrition Institute of Food Science and Technology and Nutrition (ICTAN), CSIC Madrid Spain)、Mar Faya(Psychiatry and Clinical Psychology Department, Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、Andrea Muñoz-Domenjó(Psychiatry and Clinical Psychology Department, Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、Ligia E. Díaz-Prieto(Department of Metabolism and Nutrition Institute of Food Science and Technology and Nutrition (ICTAN), CSIC Madrid Spain)、Susana del Pozo(Department of Nutrition and Food Science Faculty of Pharmacy, Complutense University of Madrid Madrid Spain)、Rosalba Alvarez-Anaya(Department of Metabolism and Nutrition Institute of Food Science and Technology and Nutrition (ICTAN), CSIC Madrid Spain)、Sara González-Álvarez(Psychiatry and Clinical Psychology Department, Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、Carlos Sánchez-Rubio(Clinical Laboratory Department Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、Marta Velázquez-Gil(Psychiatry and Clinical Psychology Department, Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、Montserrat Graell(Psychiatry and Clinical Psychology Department, Hospital Infantil Universitario Niño Jesús Madrid Spain)、José Avendaño-Ortiz(Servicio de Microbiología Hospital Universitario Ramón y Cajal and Instituto Ramón y Cajal de Investigación Sanitaria (IRYCIS); CIBER de Enfermedades Infecciosas, Instituto de Salud Carlos III Madrid Spain)、Elena Ramos-Rojo(Department of Metabolism and Nutrition Institute of Food Science and Technology and Nutrition (ICTAN), CSIC Madrid Spain)、Ascensión Marcos(Department of Metabolism and Nutrition Institute of Food Science and Technology and Nutrition (ICTAN), CSIC Madrid Spain)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Esther Nova, Mar Faya, Andrea Muñoz-Domenjó, et al. Getting into the guts of eating disorders in children and adolescents, with a perspective from psychoneuroimmunology (the PSYNIGED study): an observational, longitudinal study protocol. BMC Nutrition 2026-10-07. DOI: 10.1186/s40795-026-01505-y. 原著ライセンス:CC BY.