アマランサス(Amaranthus caudatus L.)は、南米アンデス地方で伝統的に栽培されてきた擬似穀物です。小麦や米のような一般的な穀物とは植物学的に異なるグループに属しながら、穀物と同じように利用されてきた作物で、近年は健康志向や持続可能な食料生産への関心の高まりとともに、その栄養価や加工の可能性が改めて注目されています。今回、ペルーとブラジルの研究機関に所属する研究者らが、アマランサスの栄養組成から加工技術、食品応用までを整理した総説を発表しました。

研究でわかったこと

この総説によると、アマランサスはタンパク質、食物繊維、そして抗酸化作用・抗炎症作用・心血管代謝に関わる生理活性化合物を含む栄養プロファイルを持ち、必須アミノ酸のバランスも良好であるとされています。

論文では、アマランサスに対して行われるさまざまな加工方法が取り上げられています。具体的には、製粉、焙煎、膨化(ポッピング)、圧延(ローリング)、エクストルージョン(押し出し加工)、発芽、発酵、カプセル化(エンカプセレーション)、そして特定成分の単離といった技術です。これらの加工技術が、アマランサスの栄養的な性質、機能的な性質、そして加工適性(技術的特性)をどのように変化させるかが解説されています。

さらに、こうした加工を経たアマランサスが実際にどのような食品に応用されているかについても整理されています。挙げられているのは、焼き菓子類、エクストルージョンによるスナック食品、発酵飲料、シンバイオティック食品(プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた食品)、そしてグルテンフリー製品です。これらを踏まえ、アマランサスは機能性食品やニュートラシューティカル(栄養機能を持つ食品成分)の原料としての可能性を持つ食品素材として位置づけられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は総説(レビュー)であり、著者ら自身が新たな実験を行った研究ではなく、既存の知見を整理・分析したものです。論文では、アマランサスの加工に伴う技術的・産業的な課題として、構造面、官能(風味や食感などの感じ方)面、そしてスケールアップ(工業規模での生産拡大)に関する制約が指摘されています。あわせて、健康的で持続可能な食品への世界的な需要の高まりという背景の中で、これらの課題が議論されています。また、加工条件の最適化、官能的な受容性(おいしさや食べやすさの評価)の向上、産業的な価値の向上に向けて、今後埋めるべき知見のギャップや研究の優先課題も示されており、アマランサスの食品生産システムへの統合については、さらなる評価が必要だとされています。

まとめ

今回紹介した総説は、アンデス原産の擬似穀物アマランサスについて、栄養組成や生理活性化合物、多様な加工技術、そして食品への応用可能性を幅広く整理したものです。健康や機能性食品としての潜在力が示唆される一方で、加工や官能面、産業化における課題も指摘されており、著者らは今後の研究の方向性を示しています。一つの総説として現時点の知見をまとめたものであり、アマランサスの食品への実用化については今後さらなる研究の進展が待たれます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:アマランサス(Amaranthus caudatus L.):栄養組成、生理活性化合物、加工技術、食品応用と将来展望(モレキュールズ・2026年08月)