エビ養殖と聞くと、多くの餌と大量の水が必要な産業というイメージを持つ人もいるかもしれません。実際、稚エビを育てる「育成期」では、水質管理のために頻繁な水交換が必要とされてきました。しかし近年、水をあまり交換せずに微生物の力で水質を保つ「バイオフロックシステム」という飼育方法が注目されています。今回紹介する研究は、このバイオフロックシステムと、餌に含まれるタンパク質の量が、オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)という淡水エビの育成期の成績にどう影響するかを調べたものです。
オニテナガエビは食用として養殖される大型の淡水エビです。この研究では、ブラジルの大学(連邦農村ペルナンブコ大学)で、1立方メートルあたり2,500匹という高密度の条件下で実験が行われました。実験は「飼育システムの違い(従来型の水交換システム=WESか、バイオフロックシステム=BFSか)」と「餌のタンパク質含有量の違い(35%か40%か)」を組み合わせた2×2のデザインで行われ、WES35・WES40・BFS35・BFS40という4つの条件が比較されました。
研究でわかったこと
結果として、BFS35(バイオフロックシステムでタンパク質35%の餌)の組み合わせが、基本的な生産コストが最も低く抑えられ、さらに「水フットプリント(生産にどれだけ水を使ったかを示す指標)」がWESの組み合わせと比べて10分の1程度にまで削減されたと報告されています。
経済面でも興味深い結果が示されています。BFS35における純利益は1,000立方メートルあたり2,876米ドルとされ、これはWES35(1,441米ドル)の約2倍、WES40(1,006米ドル)の約3倍に相当するとされています。つまり、タンパク質含有量を抑えた餌を使いながら、水の使用量も減らせるバイオフロックシステムのほうが、経済的にも有利だったという結果です。
研究のハイライトとして、BFSシステムは水フットプリントと餌のタンパク質含有量の両方を削減しつつ、経済的なリターンを高められる可能性があると報告されています。これらの結果から、35%のタンパク質レベルを組み合わせたバイオフロックシステムは、オニテナガエビの育成期における実行可能でより持続可能な選択肢である可能性が示唆されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究はブラジルの特定の施設・条件下で行われた一つの実験であり、得られた数値やコスト・利益の試算は、この研究の条件(高密度飼育や現地の経済環境など)に基づくものです。異なる地域や規模、餌の設計であれば結果が変わる可能性もあるため、この一つの研究だけでバイオフロックシステムの優位性が確定したと結論づけることはできない点に留意してください。
まとめ
今回紹介した研究では、オニテナガエビの育成期においてバイオフロックシステムとタンパク質35%の餌を組み合わせることで、水の使用量を大幅に減らしつつ、経済的な利益を高められる可能性が示されました。水資源の節約と養殖コストの両立という観点から、今後さらに研究が進むことが期待されるテーマだと言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食餌タンパク質水準とバイオフロックシステムがオニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)の育成期パフォーマンスに及ぼす影響(スパニッシュ・ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・リサーチ・2026年07月)