ストレス社会と言われる現代、気分を落ち着けたり、リラックスを助けるとされるサプリメントや市販薬(OTC医薬品)を試したことがある人は少なくないでしょう。ハーブ由来の成分やメラトニンなど、ドラッグストアや通販サイトで手軽に入手できる製品は種類も豊富です。しかし、こうした製品を実際にどれくらいの人が、どのように使っているのか、そして常用している薬との飲み合わせについて医師にきちんと相談しているのか——という実態は、意外と詳しく調べられていませんでした。今回、EU圏内でもサプリメント市場の拡大が著しいポーランドを舞台に、成人を対象とした調査の結果がサイエンティフィック・リポーツ誌に報告されました。
この研究は2024年10月から2025年5月にかけて、オンライン質問票と対面インタビューを組み合わせた横断調査として実施されました。対象は成人798名(うち80.6%が女性)で、気分改善やストレス緩和を目的としたサプリメント・OTC医薬品の使用状況に応じて、現在使用している人(CU)、過去に使用していた人(PU)、使用したことがない人(NU)の3グループに分類されました。統計解析にはカイ二乗検定とt検定が用いられています。
その結果、現在使用者(CU)は184名(23.06%)、過去使用者(PU)は297名(37.22%)に上ったと報告されています。よく使われていた成分としては、アシュワガンダ(Withania somnifera)、メリッサ(セイヨウヤマハッカ、Melissa officinalis)、そしてメラトニンが挙げられています。
注目すべき点として、CUのうち94名(51.09%)、PUのうち131名(44.11%)が、他の常用薬とこれらの製品を併用していたと回答しています。ところが、そのことを担当医に伝えていた人はごく一部にとどまり、CUで25.54%、PUで18.86%にすぎなかったとされています。医師に伝えなかった主な理由としては、「サプリメントの使用は医療上の判断に関係ないと考えていた」ことや、「(使用を伝えることで)否定的に思われることへの不安」が挙げられています。また、CUはPUと比べて、OTC医薬品よりもサプリメントを選ぶ傾向が強く、製品を選ぶ際に成分表示を重視する傾向、そして1年以上にわたる長期使用の傾向が、それぞれ強かったと報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この調査はポーランドの成人を対象とした一つの横断研究であり、得られた結果がそのまま他の国や集団に当てはまるとは限りません。また、回答者の8割以上が女性であるなど、対象者の構成にも偏りがある点は留意が必要です。あくまで自己申告に基づくアンケート調査であることも踏まえ、今回の結果は「サプリメントや市販薬の使用実態の一端を示すもの」として理解するのが妥当でしょう。研究チームは、こうした製品の使用について医療従事者との情報共有が乏しい現状や、安全性に関する誤解、常用薬との相互作用の可能性を踏まえ、患者教育の充実や、サプリメントの安全性を継続的に監視する仕組み(ニュートリビジランス)の強化、そして診療の場でサプリメント・市販薬の使用状況を日常的に確認することの重要性を指摘しています。
まとめ
今回の研究では、ポーランドの成人において気分改善・ストレス緩和を目的としたサプリメントやOTC医薬品の利用が広く見られる一方で、常用薬との併用について医師に伝えている人は少数派にとどまることが示されました。サプリメントは「自然由来だから安全」と考えられがちですが、他の薬との組み合わせによっては注意が必要な場合もあります。気軽に取り入れられる製品だからこそ、服用中の薬がある場合は医療者と情報を共有することの大切さを、この研究は示唆していると言えそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ポーランド成人における気分改善・ストレス緩和目的のサプリメントおよび市販薬使用の実態と使用パターン(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)