この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

論考のねらい

工場で精製・加工された原料や添加物を主体につくられる「超加工食品」は、甘味飲料、袋入りスナック、菓子パン類などを含み、世界各地で日常の食事に広がっています。これまでの研究では、肥満や生活習慣病、心の健康との関連が報告されてきました。一方で、こうした食品が所得や生活状況の違いによる健康格差を広げているのではないかという視点は、政策の議論で十分に扱われていないと著者らは指摘します。

この論文は、新しいデータを集めた研究ではなく、既存の研究成果をもとに著者らの見解を示す「パースペクティブ(論考)」です。著者らは、主に2015年から2025年に発表された研究を主要な文献データベースで探し、集団を対象とした調査、追跡調査、仕組みに関する総説を優先して取り上げました。網羅的な系統的レビューではないと明記したうえで、妊娠期から成人期までの各段階で、超加工食品の摂取が食料不安(十分な食べ物を安定して得られない状態)、心理的な苦痛、脳の発達とどう重なり合うかを整理しています。

なお、著者らは食品加工そのものを有害とはみなしていません。殺菌や冷凍、発酵、栄養強化などの技術は食の安全や栄養に貢献してきたとしたうえで、問題は新鮮な食品や手作りの食事が工業的に配合された超加工食品に置き換わっていくことだと位置づけています。食品を加工の程度で分類する「NOVA分類」については、栄養の質を十分に区別できないといった批判があることも認め、公衆衛生上の枠組みとして慎重に用いるとしています。

格差と結びつく摂取の広がり

論文が紹介する米国の全国調査(成人9190人)の分析では、共変量で調整した後、食料が十分に確保できている人では1日のエネルギーの52.6%を超加工食品から得ていたのに対し、食料不安が非常に強い人では55.7%でした。低所得者向けの食料支援制度の利用者では54.7%と、所得条件を満たしながら利用していない人の53.0%を上回っていました。また、制度を利用していない人では食料不安が強いほど摂取が増えていましたが、利用者ではこの傾向は見られませんでした。著者らは、支援制度が食料不安の悪化による影響を和らげている可能性がある一方、摂取量そのものは高いままだと述べています。

低・中所得国については、70か国の人口保健調査を分析した研究から、子どもの発育阻害(年齢に対して身長が低い状態)はゆっくりとしか減っていない一方、女性や子どもの過体重・肥満が急速に増えていることが紹介されています。アジア、中南米、中東の多くの国では、過体重・肥満が最も裕福な層より最も貧しい層で速く増えており、低栄養と過栄養が同時に存在する「栄養不良の二重負荷」が深まっていると論じています。

幼い子どもへの広がりも示されています。2022年のガーナの調査では、生後6〜23か月の乳幼児の31.6%が前日に甘い飲み物を口にしていました。また南アジアの成人6万714人を対象とした研究では、バングラデシュ、スリランカ、北インドで約4人に3人が過去24時間に少なくとも1品の超加工食品を食べており、南インドとパキスタンでも約40%にのぼりました。食べた人では、超加工食品が1日のエネルギーの約13〜17%を占めていました。

心の健康や脳の発達との関連

著者らは、価格や手軽さだけでは弱い立場の人々の摂取の多さを説明できないとして、心理的な要因に注目します。トルコの成人3997人を対象とした研究では、超加工食品の摂取量が、依存に似た食行動の尺度や、抑うつ・不安・ストレスの得点と弱いながら有意な正の相関を示しました。一方、「食べる快楽への欲求」の尺度とは関連が見られませんでした。ただし、この研究は一時点の調査であり、因果関係は判断できないと論文は注意を促しています。

健康への影響については、証拠の種類を区別して紹介しています。多数のメタ解析を統合した研究では、超加工食品の多い摂取と腎機能の低下、子どもの喘鳴、糖尿病、肥満、うつなどとの関連が報告されています。介入研究は少ないものの、成人20人を入院環境で調べた試験では、超加工食品中心の食事で好きなだけ食べた場合に摂取エネルギーが1日あたり約508kcal増え、2週間で約0.9kg体重が増えました。著者らは、これは短期的なエネルギー摂取と体重への因果的影響を支持するが、長期的な結果すべてに当てはまるとは限らないとしています。

脳の発達に関しては、妊娠中の母親の摂取が幼児期の認知機能や言語、記憶の低下と関連するという報告や、思春期の実行機能や多動・不注意症状との関連、成人期の認知症リスクとの関連が紹介されています。ただし、炎症や腸内細菌の変化などの仕組みは主に動物実験で示されたもので、超加工そのものの影響を切り分けきれないとして、著者らは直接の人での証拠とそれ以外を区別して扱う姿勢を示しています。

論考が示す意味

これらを踏まえ、著者らは政策面の手立てとして、乳幼児向け食品の成分基準や表示・販売促進の規制強化、カロリー供給にとどまらず食事の質を重視する食料支援制度への見直し、甘味飲料などへの課税と新鮮な食品への補助を組み合わせた財政・規制策、心の健康と栄養に関する支援の連携を挙げています。

論文の中心にあるのは、超加工食品の摂取を個人の食の好みの問題としてではなく、食料不安や心理的な弱さ、幼少期の発達上の弱さと重なり合い、生涯を通じて不利な立場を強めうる社会的・栄養的な脆弱性の表れとして捉える視点です。著者らは、必要な政策手段の多くはすでに存在しており、それを生涯の各段階を見通した一体的な戦略として実行することが求められていると結論づけています。

著者:Lei Qian(School of Food & Pharmaceutical Science and Technology, Guangzhou College of Technology and Business, Guangzhou 510850, China)、Zimeng Cheng(College of Food Science, South China Agricultural University, Guangzhou 510642, China)、Shiling Huang(College of Food Science, South China Agricultural University, Guangzhou 510642, China)、Kailin Zhong(College of Food Science, South China Agricultural University, Guangzhou 510642, China)、Bin Xue(College of Food Science, South China Agricultural University, Guangzhou 510642, China)、Ankita Kumari(Guangdong Key Laboratory of Food Intelligent Manufacturing, Foshan University, Foshan 528225, China)、Abdul Rahaman(Guangdong Key Laboratory of Food Intelligent Manufacturing, Foshan University, Foshan 528225, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Lei Qian, Zimeng Cheng, Shiling Huang, et al. Ultra-Processed Foods as a Cross-Cutting Driver of Health Inequities: Low- and Middle-Income Countries Across the Life-Course. Nutrients 2026-09-30. DOI: 10.3390/nu18193235. 原著ライセンス:CC BY.