菜種油やアマニ油などを搾ったあとに残る「かす」や「殻」は、これまで多くが廃棄されてきました。しかし近年、食品廃棄物を減らし、原材料を無駄なく使い切ろうという動きが世界的に広がっています。今回紹介する研究は、植物油産業から出るこうした副産物に、どのようなミネラル(元素)が含まれているのかを詳しく調べたものです。副産物に栄養的な価値があるとわかれば、機能性食品の材料として活用できる可能性があるためです。
研究の対象となったのは、菜種粕(なたねの搾りかす)、菜種ケーキ、マリアアザミ(ミルクシスル)ケーキ、亜麻仁ケーキ、そば殻という5種類の副産物です。研究チームは、これらの試料を硝酸と過酸化水素の混合液を使ってマイクロ波で分解処理したのち、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)という手法で、含まれる元素の種類と量を精密に測定しました。
研究でわかったこと
分析の結果、これらの副産物には、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウムといった主要元素(体内で比較的多く必要とされるミネラル)が豊富に含まれていることが示されました。また、マンガン・亜鉛・鉄・銅といった微量元素(少量ながら重要な役割を果たすミネラル)も多く検出されたと報告されています。
一方で、健康への影響が懸念される重金属についても調べられましたが、カドミウムはごく微量にとどまっていたとされています。
さらに研究チームは、主成分分析(PCA)と階層的クラスター分析(HCA)という統計手法を用いて、元素の含まれ方と副産物の種類との関係性を調べました。その結果、PCAでは上位2つの主成分だけで元素含有量の全体的なばらつきの86.94%を説明できることがわかり、HCAでは分析した副産物が、含まれる無機成分(元素)の特徴に基づいて4つの主要なグループに分類されたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、植物油産業の副産物に含まれる元素組成を分析し、その特徴を明らかにしたものです。副産物がミネラル源として一定の可能性を持つことを示唆する結果ですが、これは一つの研究であり、実際に食品として活用する際の安全性や有効性、摂取量との関係などについて結論が確定したわけではありません。今後、こうした知見がどのように応用されていくのか、続報にも注目したいところです。
まとめ
植物油の搾りかすや殻は、これまで見過ごされがちでしたが、今回の分析によって主要元素・微量元素を豊富に含む一方、重金属であるカドミウムは微量にとどまることが示されました。食品廃棄物の削減と資源の有効活用という観点から、興味深い基礎データを提供する研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:植物油産業副産物における主要元素・微量元素および重金属の比較分析(モナーツヘフテ・フュア・ヘミー(化学月報)・2026年07月)