著者の所属・活動拠点の国は、韓国、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
辛さは、甘味や塩味のような「基本味」ではありません。口の中の神経が刺激されて生じる感覚ですが、食べる体験を大きく左右します。中国・四川地方の調味料「香辣醤(シャンラージャン)」は、唐辛子や花椒などを使った香り高く辛いソースで、中国の消費者にはなじみ深い食品です。
研究チームは、香辣醤の辛さの強さによって食べた人の感情がどう変わるか、またその反応が韓国と中国の消費者で異なるかを調べました。あわせて、新しく強い刺激を好む性格傾向である「刺激希求性(センセーション・シーキング)」も両国で比べています。著者らは、辛さの強さ、国による背景の違い、個人の性格傾向を、中国の伝統的な辛いソースについて同時に調べた研究は少ないと述べています。
どのように調べたか
参加したのは19〜59歳の111人で、韓国人61人と中国人50人です。男女の比率は両国でそろえられ、喫煙者や味覚に影響する薬を飲んでいる人などは除外されました。試験は韓国と中国で別々に行われましたが、試料の準備や手順は同じにそろえられています。
試料には、両国でよく食べられ、性質が均一なゆでたジャガイモを使い、市販の香辣醤を添えて味わってもらいました。辛さは、メーカーが示す辛さの段階に基づいて「弱」「中」「強」の3段階が用意されました。どの試料かは参加者に分からないようにし、提示順もランダムにしています。
感情の測定には、辛い食べ物向けに作られた33語の感情語(肯定的な語21、否定的な語12)が使われました。参加者は、当てはまる感情語を選び、その強さを5段階で評価しました。このほか、好み、製品への態度、購入意向、刺激希求性もアンケートで尋ねています。
主な結果
論文によると、辛さが強くなるほど否定的な感情がはっきり増えました。一方、肯定的な感情は比較的安定しており、辛さが強いと少し下がる程度でした。否定的な感情は、どの辛さでも韓国の参加者のほうが中国の参加者より高く報告されました。ただし、辛さが増すにつれて否定的な感情が高まる傾向は両国に共通していました。
個々の感情語を見ると、韓国の参加者は弱い辛さで「好奇心」を選んだ割合が44.3%で、中国の参加者の14.0%より高くなりました。中程度の辛さでは「不快」を選んだ割合が41.0%で、中国の参加者の4.0%を大きく上回りました。強い辛さでは、韓国の参加者が「好奇心」「大喜び」「驚き」といった肯定的な語と、「恐れ」「緊張」「痛み」「不快」といった否定的な語の両方を、中国の参加者より多く選んでいました。感情の出方のパターンを図式的に整理する分析でも、国籍と辛さの段階によって異なる傾向が見られたと報告されています。
刺激希求性は、中国の参加者のほうが韓国の参加者より全体として高い結果でした。なお、辛いソースを食べる頻度には両国の間で有意な差は見られませんでした。また、どの辛さでも、肯定的な感情の得点が高いほど好み、態度、購入意向も高く、否定的な感情の得点が高いほどそれらが低いという関連が見られました。これは関連を示すもので、因果関係を示したものではありません。さらに、肯定的な感情と否定的な感情の得点の間にも正の関連があり、著者らは辛い食べ物を食べるときには両方の感情が同時に生じうると解釈しています。
研究が示すこと
この研究は、同じ香辣醤でも辛さの段階によって感情の表れ方が変わり、韓国と中国の参加者の間でも反応に違いがあることを示しました。著者らは、こうした国による違いの背景として、中国の伝統的なソースへの文化的ななじみや刺激希求性の違いが関わっている可能性を挙げ、辛い食べ物への感情的な反応は辛さの強さだけでは決まらないと解釈しています。また、食べたときの感情の得点が好みや購入意向と結びついていたことから、著者らはこの知見が辛い食品を海外の市場に合わせて開発・調整する際の手がかりになると述べています。
原著論文の著者・所属:Insun Kang(Department of Foods and Nutrition, Kookmin University, Seoul 02707, Republic of Korea)、Binglin Liu(College of Cooking Science and Technology, Jiangsu College of Tourism, Yangzhou 225000, China)、Min A Lee(Department of Foods and Nutrition, Kookmin University, Seoul 02707, Republic of Korea)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Insun Kang, Binglin Liu, Min A Lee. Effects of Spiciness Intensity on Emotional Responses to Xianglajiang: A Comparison Between Korean and Chinese Consumers. Foods 2026-09-24. DOI: 10.3390/foods15193401. 原著ライセンス:CC BY.