春から初夏にかけて、鮮やかな緑が食卓に映えるアスパラガスが旬を迎えます。スーパーでも産地直送の太くみずみずしい束が並ぶこの季節、「茹でると栄養が逃げてしまうのでは?」と気になる方も多いのではないでしょうか。今回は日本食品標準成分表(八訂)の実測データをもとに、その"常識"を丁寧に検証してみましょう。

この時期に注目したい成分

アスパラガスといえば、アミノ酸の一種であるアスパラギン酸が名前の由来になっていることでも知られています。また、春野菜に多く含まれるビタミンCや、腸の働きを助ける食物繊維も注目成分です。

日本食品標準成分表(八訂)の実測値によれば、アスパラガスの生のビタミンCは100gあたり15mg、食物繊維は1.8gとなっています。ビタミンCは熱や水に溶けやすい性質があるため、「茹でると大幅に減る」と思われがちです。しかし実際のデータはどうなのでしょうか。

生・茹で・油いため、数値を並べてみると

3つの調理法のデータを比較してみましょう(いずれも100gあたり・日本食品標準成分表(八訂)実測値)。

  • :エネルギー21kcal、たんぱく質2.6g、ビタミンC 15mg、食物繊維1.8g、鉄0.7mg
  • 茹で:エネルギー25kcal、たんぱく質2.6g、ビタミンC 16mg、食物繊維2.1g、鉄0.6mg
  • 油いため:エネルギー54kcal、たんぱく質2.9g、ビタミンC 14mg、食物繊維2.1g、鉄0.7mg

注目してほしいのはビタミンCの数値です。が15mg、茹でが16mg——茹でたほうがわずかに多い結果となっています。「茹でると栄養が逃げる」という印象とはまったく逆のデータです。

これは意外に思えるかもしれませんが、実際の食品成分は調理後の重量変化(水分の増減)や測定誤差の範囲も関係します。少なくともこのデータからは、アスパラガスを茹でることでビタミンCが著しく失われるとは言えません。

一方で油いためはビタミンCが14mgとやや低めですが、大きな差ではありません。ただしエネルギーは54kcalと茹での約2倍になるため、カロリーが気になる方は意識しておくとよいでしょう。

食物繊維に目を向けると、の1.8gに対し、茹で油いためはどちらも2.1gとなっています。食物繊維は水に溶けにくい不溶性が多い食品では加熱によって変化しにくく、こちらも茹でで減少するわけではないことがわかります。

毎日の食事への取り入れ方

データが示すように、茹でアスパラは手軽で低カロリーかつ成分もしっかり残る、優秀な食べ方です。茹でる際は沸騰したお湯で短時間(2〜3分程度)さっと火を通すと、シャキシャキとした食感も楽しめます。

  • 茹でてそのまま:マヨネーズや塩麹を添えるだけでも十分においしく、茹でたアスパラの甘みが引き立ちます。
  • 油いためで脂溶性ビタミンと組み合わせ油いためにすると、アスパラが含むβ-カロテンなどの脂溶性成分の吸収をサポートできるといわれています。にんにくや鶏肉と炒め合わせるとボリュームも出ます。
  • 生でサラダに生のアスパラを薄切りにしてシーザーサラダに加えるのもおすすめ。春らしいみずみずしい風味が楽しめます。

最新の日本人の食事摂取基準(厚生労働省)では、野菜の積極的な摂取が推奨されています。詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。アスパラガスは調理法を問わず日々の野菜摂取に取り入れやすい食材です。

まとめ

「茹でると栄養が逃げる」というイメージは、アスパラガスにおいては実測データが示す限り当てはまりません。茹でたアスパラのビタミンCはと同等以上であり、食物繊維も変わらず摂れます。思い込みにとらわれず、この季節ならではの旬のアスパラを、好みの調理法で存分に楽しんでください。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。