著者の所属・活動拠点の国は、スウェーデン、ポーランド、ドイツ、スペインです。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:食事の「合計点」では見えにくいものを探る

不安や抑うつの症状は多くの人にみられ、食事はそれらに関わりうる生活要因の一つとして研究されてきました。オリーブオイルや野菜、魚などを中心とする地中海食については、よく守っている人ほど抑うつや不安が少ないとする報告がある一方、関連が弱い、あるいははっきりしないとする報告もあり、結果は一致していません。

著者らはその一因として、評価方法に注目しました。地中海食の研究では、複数の食品項目を守っているかどうかを点数化し、合計した「遵守度スコア」がよく使われます。しかしこの方法では、どの項目も同じ重みで足し合わされるため、個々の食品と症状との関係が見えにくくなるおそれがあります。また、これまでの研究は抑うつを扱うことが多く、不安についての検討は比較的少ないと著者らは指摘しています。

さらに研究チームは、食事と気分の両方に影響しうる要因として、SNSの利用にも目を向けました。この研究は、地中海食を構成する個々の食品、SNSの利用時間、不安・抑うつ症状の関係を、仮説を立てるための予備的な調査として探ることを目的としています。

何を調べたか

調査は2023年12月から2024年1月にかけて、匿名のオンラインアンケートとして英語・スペイン語・ロシア語で実施されました。対象は、精神疾患の診断歴がない18〜65歳の成人で、著者らの個人的・所属機関のネットワークやSNSを通じて募集され、115人が回答しました。

食事は、地中海食の遵守度を測る既存の質問票を一部改変した14項目のスコアで評価されました。各項目は、たとえば「オリーブオイルを1日に大さじ4杯以上とる」「赤肉・加工肉は週2回分未満」など、基準を満たせば1点、満たさなければ0点とされます。不安と抑うつは、病院などで使われる質問票「HADS」で測定され、不安と抑うつがそれぞれ0〜21点で示されます。点数が高いほど症状が強いことを表します。SNSについては、Instagram、Facebook、Twitter/Xの1日の平均利用時間を5段階の選択肢で尋ねました。

研究チームは事前に、主な検証対象として四つの仮説を定めました。オリーブオイルを多くとること、赤肉・加工肉を控えることが、それぞれ不安得点・抑うつ得点の低さと関連するというものです。それ以外の比較は探索的な分析と位置づけられました。多くの比較を同時に行うと偶然に「有意」な結果が出やすくなるため、その影響を補正する統計的な手続きも用いられています。

主な結果

四つの主要な比較は、いずれも仮説どおりの方向の結果でした。オリーブオイルを1日大さじ4杯以上とる人の不安得点の中央値は6点で、とらない人の8点より低くなっていました。性別、年齢層、学歴を考慮した分析では、赤肉・加工肉を控える人で不安得点が約2.1点、抑うつ得点が約1.6点低いという関連もみられ、四つのうち三つが通常の基準で統計的に有意となりました。ただし、多重比較の補正後には、いずれも有意とはいえなくなりました。また、これらのモデルで説明できた症状得点のばらつきは1割未満でした。

一方、14項目を合計した地中海食スコアは、不安・抑うつのどちらとも関連が見られませんでした。個々の食品項目の関連は、食品によって向きが異なっていたと論文は報告しています。

SNSについては、Instagramで、野菜を十分にとる人は利用時間が短く、オリーブオイルを主な調理油にしている人は利用時間が長い傾向がみられるなど、食品によって向きの異なる関連が報告されました。補正後も残った唯一の関連は、甘い飲料を控える人でFacebookの利用時間が短いというものでしたが、両群の中央値は同じで、違いは甘い飲料を控えていない人の中の一部の長時間利用者に限られていたと著者らは説明しています。地中海食の合計スコアとSNS利用時間、また不安・抑うつ得点とSNS利用時間の間には、関連は見られませんでした。

この研究が示すこと

著者らは、合計スコアでは関連が見えなかった一方で、個々の食品の段階では手がかりとなる関連が現れたことに注目しています。食品ごとに逆向きの関係がある場合、それらを足し合わせると打ち消し合って見えなくなる可能性があるため、こうした指標を使う研究では、合計点と並べて個々の項目も検討する価値があると論文は述べています。オリーブオイルの量と赤肉・加工肉の摂取は、改めて検証すべき候補とされています。

ただし、これは参加者が少なく、若い人・女性・高学歴の人に偏った一時点の調査です。食事やSNS利用は自己申告であり、どちらが原因かは判断できず、不安の症状が食事やSNSの使い方に影響している可能性もあると著者らは指摘しています。今回の結果は、食事が不安を減らすことを示すものではなく、今後の検証に向けた仮説の手がかりとして位置づけられています。

著者:Piotr Religa(Department of Medicine, Solna, Karolinska Institutet)、Michel‐Edwar Mickael(Institute of Genetics and Animal Biotechnology, Polish Academy of Sciences)、Norwin Kubick(Universität Hamburg)、Inmaculada Conesa Moreno(Universidad de Murcia)、Daniel Ferris Garcia(Universidade de Santiago de Compostela)、Mariusz Sacharczuk(Institute of Genetics and Animal Biotechnology, Polish Academy of Sciences)、Atanas G. Atanasov(Institute of Genetics and Animal Biotechnology, Polish Academy of Sciences)、Jarosław Olav Horbańczuk(Institute of Genetics and Animal Biotechnology, Polish Academy of Sciences)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Piotr Religa, Michel‐Edwar Mickael, Norwin Kubick, et al. Mediterranean diet adherence, social media use, and anxiety symptoms: an exploratory cross-sectional pilot survey. Frontiers in Nutrition 2026-10-14. DOI: 10.3389/fnut.2026.1883903. 原著ライセンス:CC BY.