著者の所属・活動拠点の国は、シンガポールです。
掲載誌:Frontiers in Medicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ドラッグストアや漢方薬局に並ぶ「健康補助食品」や「中医薬製剤」。多くの人が体調維持や軽い不調のセルフケアのために利用していますが、こうした製品でも稀に体調不良(有害事象)が報告されることがあります。今回紹介する研究は、多民族国家シンガポールで、こうした健康補助製品に関連する有害事象の報告を2017年から2023年まで振り返って分析したものです。普段あまり注目されない「サプリメントや漢方の安全性モニタリング」の実態を知る手がかりとして、興味深い内容です。
どんな研究か
この研究では、シンガポール保健科学庁(HSA)の「Vigilance and Compliance Branch(VCB)」が2017年から2023年の間に評価した有害事象報告のうち、中医薬製剤(CPM)、健康補助食品、伝統医薬品、ホメオパシー医薬品などを含む「健康補助製品(CHP)」に関連する報告を集めて分析しています。分析には、患者の年齢や性別といった基本情報、有害事象の詳細、疑われた製品の情報、既往歴、検査結果、併用していた治療、報告者の職業などが含まれています。
研究でわかったこと
医薬品と健康補助製品を合わせた18万2131件の有害事象報告のうち、健康補助製品に関連するものは727件(全体の0.4%)でした。このうち健康補助食品が最も多く、全体の68%を占めていたと報告されています。
症状の種類(システム・オーガン・クラス)としては「皮膚および皮膚付属器の障害」が最も多く報告されており、なかでもグルコサミンを含む製品に関する有害事象が最多だったとされています。
製品の使用目的としては、「痛みの緩和」が33.1%で最も多く、次いで「健康維持・ウェルビーイング」が20.6%、「体重管理」が8.8%という結果でした。また、無承認の違法な成分が混入していたと判明した製品は、痛みの緩和を目的として使われていたケースが最も多かったと報告されています。混入していた成分のうち代表的な3つは、デキサメタゾン、クロルフェニラミン、プレドニゾロンだったとされています。
論文の考察では、健康補助製品全体としてはおおむね安全と考えられる一方で、出所が不明瞭な製品を中心に、成分が偽装・混入された製品には実際の健康リスクがあると指摘されています。因果関係がはっきりしない場合でも、有害事象を報告すること自体が、懸念されるパターンの早期発見や規制対応につながる、とも述べられています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまでシンガポールの規制当局に寄せられた報告を集計・分析したものであり、健康補助製品を使った人全員を対象にした調査ではありません。有害事象の「報告」は自己申告に基づくため、実際の発生率や、製品と症状との因果関係を直接証明するものではない点に注意が必要です。また、対象期間や地域もシンガポールの2017〜2023年に限られており、他の国や地域にそのまま当てはまるとは限りません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読むことが大切です。
まとめ
今回の分析では、シンガポールで2017年から2023年に報告された健康補助製品関連の有害事象は727件(全体の0.4%)で、健康補助食品が最も多く、皮膚のトラブルが目立つ結果でした。特に、痛みの緩和を目的とした製品の一部からは、デキサメタゾンなどの成分が無承認で混入していたケースが確認されたと報告されています。研究者らは、健康補助製品の安全性を守るために、医療従事者・消費者ともに成分の偽装・混入に注意を払い、気になる有害事象があれば報告することの重要性を呼びかけています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):2017年から2023年までのシンガポールにおける健康補助製品関連有害事象報告の分析(フロンティアーズ・イン・メディシン・2026年07月)
著者:Yi-Ling Quek(Pharmaceutical Division, Applied Sciences Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Yun Zeng(Pharmaceutical Division, Applied Sciences Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Xiaowei Ge(Pharmaceutical Division, Applied Sciences Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Min-Yong Low(Pharmaceutical Division, Applied Sciences Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Suet-Leng P. Ng(Vigilance and Compliance Branch, Health Products Regulation Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Mun-Yee Tham(Vigilance and Compliance Branch, Health Products Regulation Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)、Sally Soh(Vigilance and Compliance Branch, Health Products Regulation Group, Health Sciences Authority, Singapore, Singapore)