人が人生の最終段階を迎えたとき、点滴や経管栄養といった「人工的な栄養・水分補給」をどこまで行うべきか——これは医療現場で長く議論されてきたテーマです。特に90歳以上の「超高齢者」は、日本社会全体で急速に増えている世代です。今回紹介する研究では、こうした超高齢者が病院で最期を迎える際に、実際どのような栄養・水分管理が行われているのかを、電子カルテのデータをもとに振り返って調べています。

研究の背景

90歳以上の「超高齢者」が人口に占める割合は、2024年の1.6%から2040年には4.0%を超えると見込まれています。高齢化が進むにつれて、病院で終末期を迎える超高齢者への対応も、これまで以上に重要な課題になっていくと考えられます。そこで本研究は、地域病院において超高齢者の終末期にどのような人工栄養・水分補給が実際に行われているのか、その実態を明らかにすることを目的としています。

研究でわかったこと

この研究は、ある地域病院の電子カルテのデータベースを用いた後方視的研究(過去の記録をさかのぼって分析する研究)です。対象は、90歳以上で病院にて終末期を過ごし、そのまま亡くなった男女180人でした。このうち59%は自宅から入院し、38%は救急搬送での入院だったと報告されています。

分析の結果、死が近づくにつれて「口から何も摂取しない」患者の割合が増加していたことが示されました(統計的に意味のある変化とされています)。また、口からも経管からも栄養を摂っていない患者では、死が近づくにつれて、1日あたりの水分量やエネルギー量の平均値も減少していく傾向が見られました。

さらに詳しく見ると、最期の1週間の時点では、38%の患者が口からの摂取はなく末梢静脈栄養(PPN、腕などの血管から行う点滴による栄養補給)のみを受けており、9%は皮下点滴(皮下注射による水分補給)を受けていました。一方で、栄養・水分補給がすべて中止されていた患者は2%にとどまっていたということです。

これらの結果を踏まえて研究者らは、超高齢者の終末期において人工栄養・水分補給は死が近づくにつれて減少する傾向にあるものの、緩和ケアの観点から見ると、この病院ではなお過剰であった可能性があると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、一つの地域病院における180人のデータを対象にした後方視的な調査です。そのため、ここで示された傾向がすべての病院や地域に当てはまるとは限りません。また、後方視的研究という性質上、個々の患者や家族がどのような経緯や希望のもとで栄養・水分補給の方針が決まったのかといった詳しい背景までは、この研究だけでは分かりません。あくまで一つの研究結果であり、終末期の栄養・水分補給のあり方について結論が確定したものではない点に留意して読む必要があります。

まとめ

今回の研究は、90歳以上の超高齢者が病院で最期を迎える際、人工栄養・水分補給が死が近づくにつれて減少していく一方で、緩和ケアの観点からは依然として多めに行われている可能性があることを示唆するものでした。終末期における栄養や水分補給のあり方は、医療者だけでなく、私たち一人ひとりが将来を考えるうえでも関心を持っておきたいテーマだといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:日本の地域病院における「超高齢者」の終末期における人工栄養と水分補給(ホスピタル・ジェネラル・メディシン・ジャーナル・2026年03月)