栄養疫学の研究では、「ある食品を別の食品に置き換えたら、健康への影響はどう変わるか」という問いがよく立てられます。たとえば「非発酵乳を発酵乳に置き換えたら死亡リスクはどうなるか」といった具合です。こうした問いに答えるための統計的な工夫は「代替モデリング(substitution modeling)」と呼ばれますが、実はそのモデルの組み方(何を調整変数に含めるか、単位をグラムにするかカロリーにするか等)によって、得られる結果が大きく変わりうることが、これまでのシミュレーション研究で指摘されてきました。中には、真の効果とは逆方向の結果を示してしまうモデルもあるとされています。しかし、こうした違いを実際のデータを使って確かめた研究はまだ少ないといいます。今回紹介する論文は、この「モデルの選び方」がどれほど結果に影響するのかを、実データを用いて検証した方法論的研究です。

研究でわかったこと

この研究では、スウェーデンの高齢男性1063人を対象としたコホート(追跡調査)データを使い、「発酵乳」と「非発酵乳」の摂取を曝露(着目する要因)、全死因死亡率(あらゆる原因による死亡)を結果として、複数の代替モデリング手法を比較しています。

具体的には、大きく2つのモデリング戦略が比較されました。1つは「非特定(nonspecified)」アプローチで、総エネルギー摂取量のみを調整するものです。もう1つは「特定(specified)」アプローチで、総エネルギーに加えて他の食品の摂取量も調整します。この特定アプローチはさらに、置き換え対象の食品を除外する「leave-one-out(1つ抜き)モデル」と、残りの食品も調整に含める「包括的leave-one-outモデル」に分けて検討されました。加えて、摂取量の単位をグラム、キロカロリー(kcal)、あるいは両者を混合した形で表すかによる影響も調べられ、合計18通りのモデル(混合単位・同一単位の組み合わせ)で比較が行われています。解析にはCox比例ハザード回帰モデルが用いられ、スウェーデンの国民死亡登録データをもとにハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)が算出されました。

結果として、非特定モデルでは、非発酵乳についての推定値が単位の選び方によって異なりました。たとえば混合単位で計算した場合はHR 1.18(95%CI: 0.95–1.48)だったのに対し、同一単位(kcal)で計算した場合はHR 1.00(95%CI: 0.80–1.25)と、値に差が見られたと報告されています。一方、発酵乳については単位の違いによる推定値の差は見られませんでした。これに対し、特定モデル(他の食品を調整に加えたモデル)では、単位の選択にかかわらず、おおむね似た推定値が得られたとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、特定の食品が健康に良い・悪いということを直接示す研究ではなく、「代替モデリングという統計手法そのものが、結果の見え方にどう影響するか」を検証した方法論研究である点に注意が必要です。論文の著者らも、特定モデルどうしでは推定値がおおむね一致していたものの、それぞれのモデルは厳密には異なる研究上の問い(リサーチクエスチョン)に答えているのであり、その違いを明確にすることが今後の研究では望ましいと述べています。また、対象はスウェーデンの高齢男性1063人という特定の集団であり、この一つの研究結果をもって代替モデリングの「正解」が確定したわけではありません。

まとめ

今回紹介した研究は、栄養疫学でよく使われる「食品の代替効果」を推定する統計モデルについて、モデルの組み方や単位の選択次第で結果が変わりうることを、実際のコホートデータを用いて示したものです。非発酵乳では調整の仕方や単位によって推定値に差が見られた一方、他の食品も調整に含める特定モデルでは比較的安定した結果が得られたと報告されています。栄養研究のニュースを読む際には、「どのようなモデルでその関連が推定されたのか」という背景にも目を向けると、結果をより正確に理解する助けになりそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食品代替モデリング手法:方法論的研究(カレント・ディベロップメンツ・イン・ニュートリション・2026年07月)