この研究は、タイ、台湾、イギリスの研究機関の研究論文です。
掲載誌:BMC Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
精油を直接触れさせずに品質を保てるか
マンゴーは収穫後も熟し続け、果皮の色が変わり、軟らかくなるとともに、病気による傷みも起こりやすくなります。研究チームは、タイバジルから得られる精油の蒸気が、マンゴー品種「ナムドクマイ・シートン」の収穫後の品質や、果実に黒い病斑を生じさせる炭疽病にどう影響するかを調べました。
着目したのは、精油を果実に塗るのではなく、揮発した成分にさらす方法です。精油の抗菌作用などは以前から研究されていましたが、このような非接触の処理が、保存中の外観や果肉の成分に及ぼす影響は十分に調べられていませんでした。
保存中の色、硬さ、成分を比較
研究チームは、マンゴーを1個ずつ容量1リットルの容器に入れ、容器内の綿に精油を加えました。精油の量は、無処理を含む6段階で、1容器当たり0~500マイクロリットルでした。果実は17~19℃、相対湿度75~85%で16日間保存し、各測定日に別々の果実を使って、果皮の色、硬さ、重量減少、糖や酸の量などを比較しました。
さらに、果肉中のフェノール類やフラボノイド類といった成分、抽出液が酸化に関わる物質をどの程度取り除くかを示す抗酸化活性も測定しました。品質の試験とは別に、炭疽病菌を人工的に接種した果実を精油の蒸気にさらし、病斑の広がりを調べる試験も行いました。
効果は主に外側の品質に現れ、添加量で異なった
著者らによると、保存期間が長くなるにつれて、どの処理でも果皮の色が変わり、重量と硬さが低下しました。その中で、精油の添加量が少ない処理では、無処理に比べて重量減少が小さく、果実の硬さも保たれる傾向がありました。16日目の重量減少は、低添加量の処理で約4%、高添加量の処理で7~8%、無処理で約8%でした。精油は果皮の黄色みや全体的な色の変化にも影響しました。
一方、添加量を増やせば品質がよりよく保たれるわけではありませんでした。最大添加量の処理では、硬さの低下が無処理と同程度でした。また、精油の添加量による果肉の硬さの有意な違いはなく、著者らは、軟化を遅らせる効果は限定的だとしています。
果肉の酸性度、酸や糖の量、総フェノール量、総フラボノイド量にも、精油の添加量による有意な違いは認められませんでした。抗酸化活性には添加量の影響が見られたものの、その効果は限られていました。研究から伝わるのは、タイバジル精油の蒸気は、この保存条件では主に果実の外側の品質に作用し、少ない添加量での利点と、多い添加量では保護効果が得られないという違いがあることです。
著者:Tibet Tangpao(Department of Plant and Soil Sciences, Faculty of Agriculture, Chiang Mai University, Chiang Mai, 50200, Thailand)、Hsiao-hang Chung(Department of Horticulture, National Ilan University, Yilan County 260, Yilan City, Taiwan)、David George(School of Natural and Environmental Sciences, Newcastle University, Agriculture Building, Newcastle upon Tyne, NE1 7RU, UK)、Ratchuporn Suksathan(Queen Sirikit Botanic Garden, The Botanical Garden Organisation, Chiang Mai, 50180, Thailand)、Sarana Rose Sommano(Department of Plant and Soil Sciences, Faculty of Agriculture, Chiang Mai University, Chiang Mai, 50200, Thailand)、Julaluk Khemacheewakul(Division of Food Science and Technology, School of Agro-Industry, Faculty of Agro-Industry, Chiang Mai University, Chiang Mai, 50100, Thailand)、Malaiporn Wongkaew(Program of Food Production and Innovation, Faculty of Integrated Science and Technology, Rajamangala, University of Technology Lanna, Chiang Mai, 50300, Thailand)、Piyachat Sunanta(Multidisciplinary Research Institute, Chiang Mai University, Chiang Mai, 50200, Thailand)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tibet Tangpao, Hsiao-hang Chung, David George, et al. Vapour-phase Thai basil essential oil and its effects on postharvest quality of ‘Nam Dok Mai Si Thong’ mango. BMC Agriculture 2026-09-30. DOI: 10.1186/s44399-026-00057-7. 原著ライセンス:CC BY.