魚や貝、エビなどの魚介類は健康によいというイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。実際、これまでにも魚介類の摂取と脳卒中リスクとの関連を調べた研究はいくつか行われてきましたが、その結果は一致しておらず、はっきりした結論は出ていませんでした。今回紹介するのは、中国・浙江省で5万人を超える人々を長期間追跡した大規模な前向きコホート研究です。魚介類を食べる頻度と脳卒中の発症リスクとの関連を、性別ごとに詳しく調べています。
どんな研究が行われたのか
この研究は、中国のChina Kadoorie Biobankという大規模研究の一部として、浙江省桐郷市に住む30〜79歳の53,916人を対象に行われました。参加者は魚介類をどのくらいの頻度で食べているか(食べない、月に数回、週1〜3日、週4日以上など)を申告し、その後、脳卒中サーベイランスシステムや死亡登録、国の医療保険データベースとの照合によって、脳卒中の発症が定期的に確認されました。追跡期間は合計643,100人年(追跡期間の中央値は12.4年)に及び、その間に2,994件の脳卒中(うち虚血性脳卒中2,213件、出血性脳卒中772件)が確認されています。統計解析にはコックス回帰という手法が用いられ、年齢や他の要因を調整したうえで、魚介類の摂取頻度と脳卒中発症リスクとの関連が検討されました。
研究でわかったこと
参加者全体では、約48.2%が週1回以上魚介類を食べていると回答していました。しかし、参加者全体で見ると、魚介類の摂取頻度と脳卒中全体(またはそのサブタイプ)のリスクとの間には、統計的に意味のある関連は見られませんでした。
ところが、性別で分けて解析すると異なる結果が浮かび上がりました。男性では、魚介類を全く食べない人と比べて、月に数回食べる人のハザード比は0.90、週1〜3日食べる人は0.83、週4日以上食べる人は0.64と、食べる頻度が高いほど脳卒中全体のリスクが低くなる傾向が示され、この傾向は統計的にも意味のあるもの(傾向性のp値=0.009)とされました。虚血性脳卒中についても同様の関連(傾向性のp値=0.024)が見られましたが、出血性脳卒中との関連は認められませんでした。一方、女性では、魚介類の摂取頻度と脳卒中全体、あるいはそのサブタイプとの間に、統計的に意味のある関連は見られませんでした。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究では、魚介類の摂取は出血性脳卒中とは関連が見られなかったこと、そして男性においてのみ、魚介類の摂取頻度が高いほど脳卒中全体および虚血性脳卒中のリスクが低いという関連が示されたことが報告されています。女性ではこうした関連は見られませんでした。論文の著者らも、こうした脳卒中のサブタイプ別・性別による関連の違いについては、今後さらなる研究で検証する必要があると述べています。今回の結果はあくまで一つのコホート研究で観察された関連であり、魚介類を食べることが脳卒中を予防すると断定するものではありません。また、この研究は中国・浙江省の特定地域の集団を対象としたものであり、食習慣や生活環境が異なる集団に同じ結果がそのまま当てはまるとは限らない点にも留意が必要です。
まとめ
今回の中国・浙江省での大規模コホート研究では、魚介類の摂取頻度と脳卒中リスクとの関連を調べた結果、参加者全体では明確な関連は見られなかったものの、男性においては魚介類を多く食べる人ほど脳卒中全体および虚血性脳卒中のリスクが低い傾向が示唆されました。一方で女性ではそうした関連は見られず、出血性脳卒中とはいずれの性別でも関連が認められませんでした。性差のあるこうした関連の背景については、今後の研究による検証が待たれます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:魚介類摂取頻度と脳卒中リスク:中国浙江省における前向きコホート研究(ニュートリション・アンド・メタボリズム・2026年05月)