庭先や東南アジア・南アジアの一部地域で見かける「セイロンスグリ(Dovyalis hebecarpa)」という果物をご存じでしょうか。まだ広く食用や商業利用が進んでいない、いわば「知られざる果実」です。果物は熟すにつれて甘みや色が変わっていきますが、実は健康に関わるとされる成分の量も、熟し具合によって変化することがあります。今回紹介する研究は、このセイロンスグリの果実を「未熟期(near-ripe)」「完熟期(ripe)」「過熟期(over-ripe)」の3段階に分け、フェノールやフラボノイドといった植物由来成分、そして抗酸化力・抗炎症力の指標がどう変化するかを比較したものです。

研究でわかったこと

研究チームは、それぞれの成熟段階の果実を凍結乾燥させたのち、80%メタノールを使って72時間かけて成分を抽出しました。得られた抽出物について、まず「総フェノール含量(TPC)」をフォーリン・チオカルト法で、「総フラボノイド含量(TFC)」を塩化アルミニウム法で測定しています。次に、抗酸化活性をDPPH法とABTS法という2種類の試験で評価しました(比較対照としてビタミンCの一種であるアスコルビン酸を使用)。さらに、抗炎症の可能性を調べるため、HRBC(ヒト赤血球膜安定化)法とタンパク変性抑制法という2つの試験も行われました(比較対照は抗炎症薬のイブプロフェン)。

その結果、3つの成熟段階のうち、フェノール含量・フラボノイド含量ともに最も高い値を示したのは「未熟期」の抽出物でした。総フェノール含量は2.0138 ± 0.7143 mg GAE/g、総フラボノイド含量は0.2104 ± 0.0049 mg QEとして報告されています。

抗酸化活性についても、未熟期の抽出物が最も高い効力を示しました。DPPH法によるIC50値(数値が小さいほど強い活性を示す指標)は0.3085 mg/mL、ABTS法によるIC50値は0.1293 mg/mLで、いずれも未熟期の抽出物が最も低い(=最も強い)値を記録しています。

抗炎症活性を示す指標でも同様の傾向が見られました。HRBC法におけるIC50値は0.0547 mg/mL、タンパク変性抑制法におけるIC50値は0.0965 mg/mLと、どちらも未熟期の抽出物が最も低い値、つまり最も強い作用を示したとされています。

これらの結果から、研究チームはセイロンスグリの果実がフェノールやフラボノイドなどの植物成分、抗酸化力、抗炎症の可能性を持つ果実であり、特に未熟期に摂取することで、これらの機能性が最大限に発揮される可能性があると述べています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、実験室内での抽出物を用いた測定にもとづくものであり、果実をそのまま食べた場合に人の体内で同様の効果が得られるかどうかを直接示したものではありません。また、抗酸化・抗炎症の「ポテンシャル(可能性)」を評価した基礎的な研究段階であり、病気の予防や治療効果を証明したものではない点に留意が必要です。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。

まとめ

今回の研究は、あまり知られていない果実であるセイロンスグリについて、熟し方によってフェノールやフラボノイドの含量、抗酸化力、抗炎症に関わる指標が変化することを示しました。中でも、まだ熟しきっていない「未熟期」の果実で、これらの値が最も高くなる傾向が報告されています。今後、この果実の食品・医薬資源としての可能性を探るうえで、一つの手がかりとなる基礎データといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:セイロンスグリ(Dovyalis hebecarpa)果実の成熟段階による生理活性の動態:フィトケミカル、抗酸化能、抗炎症ポテンシャル(スリランカン・ジャーナル・オブ・バイオロジー・2026年07月)