チーズやヨーグルトなど、発酵させてつくる乳製品には、乳酸菌をはじめとするさまざまな微生物が関わっています。こうした発酵食品は世界各地に独自の伝統があり、その土地ならではの菌が住み着いていることも少なくありません。今回紹介するのは、中央アジアのカザフスタンに伝わる伝統的な発酵乳製品や発酵飲料に、どのような微生物が存在しているのかを調べた研究です。カザフスタンの発酵乳製品は同国の食文化の重要な一部とされており、研究チームはそこに「有用な可能性を持つ微生物の宝庫」があるのではないかという視点から調査に取り組んだと報告されています。

研究でわかったこと

この研究では、カザフスタン国内の異なる地域から、手作り(職人的製法)のチーズや、乳や穀物を原料とした伝統的な発酵飲料のサンプルが集められました。地域によって原材料や製法が異なるため、その違いによって菌の構成にどのような差が出るかを捉えることが狙いだったとされています。

集めたサンプルの微生物を調べたところ、いずれの製品でも乳酸菌が主要な微生物として存在していることが確認されました。具体的には、Lactobacillus属(近年分類が見直された菌群を含む)、Lactococcus属、Streptococcus属、Leuconostoc属、Enterococcus属といった、乳酸菌の仲間が中心だったと報告されています。また、一部の発酵飲料では酵母の存在も認められ、乳酸発酵とアルコール発酵が同時に起きている可能性が示唆されています。

さらに、地域によって菌の構成プロファイルに違いが見られたことから、使用される原材料や伝統的な加工方法、さらにはその土地特有の環境微生物相(周囲に存在する微生物の集団)が影響している可能性があると考察されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、カザフスタンの伝統的な発酵食品に含まれる微生物の種類や構成を科学的に記録・整理することを目的としたものであり、特定の健康効果を検証した臨床試験ではありません。論文では、これらの発酵食品が機能性を持つ乳酸菌の多様な供給源であり、将来的に機能性食品の開発やスターター培養(発酵を起こすための菌株)の選定に役立つ基礎資料になりうるとされています。あくまで一つの研究であり、特定の効果が確定したものではない点に留意してください。

まとめ

今回の研究では、カザフスタンの伝統的なチーズや発酵乳・穀物飲料から、Lactobacillus属をはじめとする多様な乳酸菌が検出され、地域ごとに菌の構成に違いが見られることが報告されました。伝統的な発酵食品が持つ微生物の多様性を知る手がかりとして、興味深い報告だといえるでしょう。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:カザフスタンで地域生産されるプロバイオティクス乳製品とその健康効果(ワー・アカデミア・ジャーナル・オブ・ヘルス・アンド・ニュートリション)