糖尿病の治療では、血糖コントロールのために食事内容が重要な役割を果たすとされています。その中で近年注目されているのが「体重スティグマ」という概念です。これは、自分の体重について他者から偏見の目で見られるのではないか、恥をかかされるのではないかという不安や、自分自身を否定的に評価してしまう感覚を指します。これまでの研究では、糖尿病患者において体重スティグマが「食べ過ぎ」や「食事のコントロールがうまくいかないこと」と関連することが報告されてきました。しかし、体重スティグマが食事の「多様性」、つまりどれだけ幅広い種類の食品を摂れているかということと関連するかどうかは、これまで調べられてこなかったといいます。今回紹介する研究は、この点に着目し、糖尿病患者を対象に体重スティグマと食事多様性の関連を調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、伊勢赤十字病院で外来治療を受けている糖尿病患者315名(男性178名、女性137名)を対象に調査が行われました。食事の多様性は「食品摂取頻度スコア(FFS)」と「タンパク質食品摂取頻度スコア(PFFS)」という指標を使って測定されました。また、体重スティグマは日本語版のWeight Self-Stigma Questionnaire(WSSQ-J)という質問票で評価され、この質問票には「自己評価の低下(self-devaluation)」と「スティグマを受けることへの恐怖感(fear of enacted stigma)」という2つの下位尺度が含まれています。
性別や年齢を考慮した重回帰分析の結果、女性および高齢者においては、「スティグマを受けることへの恐怖感」の得点が高いほど、FFSおよびPFFSで測定した食事多様性が低い傾向が見られたと報告されています。一方で、男性や65歳未満の参加者では、WSSQ-Jの総得点、自己評価の低下、スティグマを受けることへの恐怖感のいずれの得点についても、食事多様性との関連は認められなかったとされています。つまり、体重にまつわる恥ずかしさや周囲の目を気にする感情が強い女性や高齢の糖尿病患者ほど、食べる食品の種類が偏りやすい可能性が示唆された、という結果です。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の1つの病院の外来患者を対象とした横断的な調査であり、体重スティグマと食事多様性の低下との「関連」を示したものであって、体重スティグマが食事多様性の低下を「引き起こす」という因果関係を証明したものではありません。また、関連が見られたのは女性と高齢者においてであり、男性や65歳未満の参加者では同様の関連は確認されなかった点も踏まえて読む必要があります。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点に留意しておくとよいでしょう。
まとめ
今回の研究では、糖尿病患者のうち女性および高齢者において、体重にまつわる「スティグマを受けることへの恐怖感」が強いほど、食事の多様性が低下する傾向と関連していたことが報告されました。体重に関する偏見や恥辱感といった心理的な要因が、食事の内容や幅広さにも関わりうる可能性を示す知見として、今後さらなる研究の広がりが期待されるテーマといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:体重スティグマは糖尿病患者の女性および高齢者における食事多様性の低下と関連する(BMCニュートリション・2026年05月)