この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

自閉スペクトラム症(ASD)の子どもでは、食べ物の好き嫌いが強い、特定の食べ物を拒む、食感・味・におい・温度・見た目に敏感といった食事の困難さが、そうでない子どもより多く見られると報告されています。こうした特徴は、同じものばかり食べたり特定の食品群を避けたりすることにつながり、食事の幅が狭まる可能性があると考えられてきました。

一方で、これまでの研究では、ASDの子どもが皆同じように食事が偏っているわけではないことも示されています。食事の幅がかなり限られる子どももいれば、比較的多様な食事をしている子どももいます。研究チームは、ASDの子どもと神経発達症の診断がない子どもを比べ、食事の多様性と、食べることの困難さや食事に関わる感覚の特徴との関係を調べることを目的としました。

何をどのように調べたか

研究には2〜10歳の子ども181人が参加しました。精神科医によってASDと診断された子ども85人を研究群とし、教育施設から募った、神経発達症の診断がない子ども96人を対照群としました。

食事の多様性は「食事多様性スコア(DDS)」で評価しました。保護者への聞き取りで前日24時間に子どもが食べたものを記録し、穀類、濃い緑の葉物野菜、根菜・いも類、その他の野菜、果物・果汁、豆類・種実類、肉・魚・鶏肉、乳・乳製品、卵の9つの食品群のうち、いくつを食べたかを0〜9点で数えます。論文は、このスコアはその日の食品群の幅を示すもので、普段の食事の多様性や、食事の質・栄養が十分かどうかを表すものではないと説明しています。

食べることの困難さは、保護者が答える14問の質問票(モントリオール小児病院摂食スケール)で評価しました。食欲、食事にかかる時間、食事中の行動、むせたり吐き出したりするか、食べさせるのを強いる必要があるか、食事が家族関係に与える影響などを尋ね、合計点が高いほど困難さが強いとされます。なお、この質問票のポーランド語版は6歳以下で妥当性が確認されたもので、著者らは7歳以上への適用には注意が必要だとしています。

主な結果

食べることの困難さの合計点は、中央値がASD群53点、対照群54点で、統計的に意味のある差は見られませんでした。年齢・性別・体格指数(BMI)を考慮した分析でも、ASDであることと合計点の間に有意な関連は認められませんでした。ただし、ASD群では点数のばらつきが大きく、困難さが「ない」と判定された子どもの割合(22.35%対2.08%)と、最も重い段階と判定された子どもの割合(21.18%対7.29%)が、どちらも対照群より高くなっていました。

食事多様性スコアの中央値はASD群6、対照群5で、単純な比較では有意差はありませんでした。一方、年齢・性別・BMIを考慮した分析では、ASD群のほうが平均して約1.07点高いという関連が示されました。スコアを3段階に分けると、多様性が低い子どもはASD群32.94%、対照群15.63%、高い子どもはASD群34.12%、対照群19.79%で、ASD群では低い側と高い側の両方に多く分かれていました。対照群では中程度の子どもが64.58%を占めていました。

食品群ごとに見ると、ASD群では「その他の野菜」、豆類・種実類、乳・乳製品を食べた子どもの割合が高く、対照群では濃い緑の葉物野菜を食べた子どもの割合が高くなっていました。

研究が示すこと

この研究では、ASDの子どもで食事の多様性が一様に低いという結果にはならず、多様性が低い子どもと高い子どもの両方が多く含まれていました。食べることの困難さについても、困難さがない子どもと重い子どもの両方がASD群に多く見られました。著者らは、ASDという診断だけで子どもの食事の特徴を一律に捉えることはできず、一人ひとりの食事の多様性や栄養面のニーズを個別に評価することが必要だと述べています。

なお、参加者は特定の施設から集められたため、結果をすべての子どもに当てはめることには慎重であるべきだと著者らは注意を促しています。

著者:Martina Grot(Department of Human Nutrition, Division of Dietetics, School of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia in Katowice, Building IVA, SUM Campus, 19 Dr. Henryk Jordan St., Zabrze-Rokitnica, 41-808 Zabrze, Poland)、Oskar Kowalski(Department of Human Nutrition, Division of Dietetics, School of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia in Katowice, Building IVA, SUM Campus, 19 Dr. Henryk Jordan St., Zabrze-Rokitnica, 41-808 Zabrze, Poland)、Agnieszka Białek-Dratwa(Department of Human Nutrition, Division of Dietetics, School of Public Health in Bytom, Medical University of Silesia in Katowice, Building IVA, SUM Campus, 19 Dr. Henryk Jordan St., Zabrze-Rokitnica, 41-808 Zabrze, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Martina Grot, Oskar Kowalski, Agnieszka Białek-Dratwa. Dietary Diversity in Children with Autism Spectrum Disorders, Feeding Difficulties, and Sensory Issues Related to Eating—A Case–Control Study. Nutrients 2026-09-19. DOI: 10.3390/nu18183061. 原著ライセンス:CC BY.