学校や大学、病院などの給食施設は、多くの人に食事を提供するだけでなく、社会全体の食のあり方や持続可能性にも影響を与える存在だといわれます。こうした施設で働く調理スタッフや配膳・洗い場のスタッフは、日々「食」に関わる仕事をしていますが、では彼ら自身の食生活はどうなのでしょうか。そして、食に関する知識や判断力(食リテラシー)は、自分の食事の質や、持続可能で健康的な食行動とどう関係しているのでしょうか。今回紹介する研究は、トルコ・アンカラの大学に付属する厨房や食堂で働くスタッフを対象に、この関係を調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、アンカラの大学の厨房・食堂で働く19〜64歳のボランティアスタッフ173名が調査対象となりました。内訳は、調理師や調理補助といった「調理担当スタッフ」と、配膳係・食器洗浄係・清掃係といった「支援スタッフ」です。調査では、対面式のアンケートを通じて、社会人口統計学的な情報に加え、「持続可能で健康的な食行動(SHE)尺度」、「自己評価による食リテラシー(SPFL)尺度」、そして過去24時間に何を食べたかを尋ねる「24時間食事思い出し法」によるデータが集められました。食事の質は、この24時間食事思い出し法のデータをもとに、「Healthy Eating Index-2020(HEI-2020)」という指標で評価されています。
分析の結果、食リテラシー(SPFL)の総得点と、持続可能で健康的な食行動(SHE)の総得点との間には、中程度の正の相関関係があることが示されました(r=0.584、p<0.001)。つまり、食に関する知識や理解が高いと自己評価する人ほど、持続可能で健康的な食行動をとる傾向がみられたということです。また、食リテラシーの総得点と食事の質(HEI-2020の総得点)との間にも、弱いながら正の相関が確認されました(r=0.160、p=0.036)。
スタッフの職種別に見ると、調理師や調理補助を含む「調理担当スタッフ」の食リテラシー平均得点は、配膳係・食器洗浄係・清掃係を含む「支援スタッフ」よりも高いことが示されました(p=0.006)。一方で、注目すべき点として、調査に参加したスタッフの中に「良好な食事の質」に該当する人は一人もいなかったと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、トルコの一つの大学に付属する給食施設で働く173名のスタッフを対象にした横断研究であり、ある時点における関連性を調べたものです。そのため、食リテラシーが高まれば食事の質や持続可能な食行動が実際に改善する、といった因果関係を証明するものではありません。あくまで一つの研究であり、対象者の地域や職場の特性によって結果が異なる可能性もあります。著者らは、食に関わる仕事をするスタッフの食リテラシーを高めることで、持続可能で健康的な食行動や食事の質の向上につながる可能性が示唆されるとし、あわせて食事の質を改善するための取り組みの必要性を指摘しています。
まとめ
この研究では、大学の給食施設で働くスタッフを対象に、食リテラシーと持続可能で健康的な食行動、食事の質との関連が調べられました。食リテラシーが高い人ほど持続可能で健康的な食行動をとる傾向、そして食事の質もやや高い傾向がみられた一方、参加したスタッフの誰一人として「良好な食事の質」には該当しなかったという結果も示されています。日々多くの人に食事を提供する立場にあるスタッフ自身の食生活についても、目を向ける価値があることを示す研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:施設給食の調理・支援スタッフにおける食リテラシー、食事の質、持続可能な栄養行動:横断研究(ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年07月)