ごはんは私たちの主食ですが、その主成分である澱粉の中にも「消化されにくいタイプ」があることをご存じでしょうか。「難消化性澱粉(レジスタントスターチ、RS)」と呼ばれるこの澱粉は、小腸で消化されにくく、食後の血糖値の上がり方が穏やかになるとされています。また、消化されずに大腸まで届いた澱粉は、食物繊維のように腸内環境の改善に役立つ可能性があるとして、世界的に注目を集めているそうです。

今回紹介するのは、イネ(米)を対象に、このレジスタントスターチの含有量をどう制御できるかを考察した論文です。

研究でわかったこと

一般的な米のRS含量は1%未満と、もともと多くはないそうです。しかし、澱粉を構成する成分のうち「アミロース」の含量が高いほどRS含量は高くなる傾向があり、さらにもう一方の成分である「アミロペクチン」について、短い鎖が少なく長い鎖が多い構造ほど、RS含量が劇的に増加することが示されています。

加えてRS含量は、調理方法(生の澱粉か、加熱により糊化した澱粉か)や、噛む際の澱粉の表面積・塊の大きさといった要因だけでなく、イネを栽培している間の気温、特に花が咲いてから実が熟すまでの「登熟期」の気温によっても多少変動し、収量など農業上の性質にも影響することが述べられています。

一方で、炊いたご飯の「食味(おいしさ)」とRS含量は相反する関係にあるとされ、両立が難しい面があるようです。そこでおいしさを保ちながらRSを摂取できるよう、米粉やゲル状に加工することで、その特性を生かした用途開発が進められているとのことです。

こうした背景を踏まえ、この論文では米澱粉のRS含量を制御するために、①RS含量を増やすにはどのような澱粉の構造が必要か、②どの澱粉合成関連酵素の働きを失わせる、あるいは高めることでそのような構造が得られるのか、という2つの観点から研究例が紹介されています。具体的には、澱粉に枝を作る酵素(BE)、枝を切る酵素であるイソアミラーゼ1(ISA1)、澱粉を合成するスターチシンターゼ(SS)など、複数の酵素の働きのバランスに着目したイネの研究が取り上げられています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この記事で紹介した内容は、レジスタントスターチの制御に関するイネの研究例をまとめて紹介するものであり、単一の実験結果を報告するものではない点に留意が必要です。また、ここで述べられている健康面の効果は「示唆されている」「注目されている」といった段階の情報であり、特定の食品や成分が病気を予防・改善すると確定づけるものではありません。澱粉構造とRS含量、酵素の働きの関係についても、今後さらに研究が積み重ねられていく分野と考えられます。

まとめ

普段何気なく食べているご飯にも、澱粉の構造という観点から見ると奥深い世界が広がっています。おいしさとレジスタントスターチ含量という一見相反する特性をどう両立させるか、酵素の働きに着目した育種研究の今後の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:難消化性澱粉(レジスタントスターチ)含量の制御に向けて:イネの例(J-STAGE 収録論文(日本)・2026年07月)