「伝統的な食事は体によい」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。実際に、地中海食など特定の地域の伝統的な食事パターンと生活習慣病との関連を調べる研究は世界各地で行われてきました。今回紹介するのは、中国の伝統的な食事パターン(Traditional Chinese Diet、TCD)に注目し、心血管疾患や糖尿病、がん、肥満、そして死亡リスクとの関連を長期間にわたって調べた研究です。あらかじめ定義された指標を用いてTCDへの遵守度を評価し、非感染性疾患(NCDs)との関連を検討した研究はこれまでなかったとされています。
研究でわかったこと
この研究では、中国健康栄養調査(CHNS)という大規模な追跡調査のデータのうち、1997年から2011年までの期間が用いられました。対象となったのは、調査開始時点で非感染性疾患を持たず、少なくとも2回の調査に参加した18〜74歳の成人11,158人(平均年齢42.2歳、女性51.3%)です。
参加者は「TCD指数」と呼ばれる指標に基づいて食事の伝統的な中国食への遵守度を評価され、スコアに応じて低(0〜6点)・中(7〜11点)・高(12〜23点)の3グループに分けられました。スコアが高いほど、伝統的な中国食のパターンにより近い食事をしていることを示します。統計解析では、混合効果多水準ロジスティック回帰やCox比例ハザードモデルという手法を用いて、心血管疾患・糖尿病・がん・肥満/中心性肥満・高血圧・全死因死亡率との関連が検討されました。
その結果、TCDへの遵守度が高いグループでは、低いグループと比べて心血管疾患のリスクが低い(オッズ比0.73)ことに加え、全死因死亡率も低い(ハザード比0.73)という関連が報告されています。一方で、肥満(オッズ比1.19)や中心性肥満(オッズ比1.19)のリスクは、むしろ高いグループのほうが高いという関連も同時に示されました。興味深いことに、総エネルギー摂取量を一定の基準にそろえて比較し直すと、TCDへの遵守度は肥満・中心性肥満とは逆に、リスクが低い方向の関連に変わったとされています。つまり、摂取エネルギー全体の量が、この食事パターンと体重に関する指標との関係を読み解くうえで重要な要素である可能性が示唆されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定の集団を対象に一定期間追跡して統計的な関連を調べた観察研究であり、TCDへの遵守が心血管疾患や死亡リスクを直接下げる、あるいは肥満を引き起こす、といった因果関係を証明するものではない点に注意が必要です。あくまで「関連が見られた」という報告であり、一つの研究として結論が確定したわけではありません。また、対象は中国健康栄養調査に参加した中国の成人であるため、結果がそのまま他の集団に当てはまるとは限りません。研究者らは、肥満との関連を踏まえ、今後の食事指針を検討する際には総エネルギー摂取量も併せて考慮する必要性を指摘しています。
まとめ
今回のCHNSデータを用いた縦断研究では、伝統的な中国食への遵守度が高いことは心血管疾患や全死因死亡率のリスクの低さと関連する一方で、肥満や中心性肥満のリスクの高さとも関連していたと報告されています。ただしエネルギー摂取量をそろえて比較すると、肥満との関連は逆転する可能性も示されており、食事パターンだけでなく摂取エネルギー全体を含めた視点の重要性が示唆される結果といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:伝統的中国食と非感染性疾患および全死因死亡率との関連:中国健康栄養調査(CHNS)に基づく縦断研究(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年07月)