お粥は消化にやさしい食べ物というイメージがあり、飲み込む力が弱くなった方向けの「嚥下調整食」として広く使われています。しかし、同じ量のごはんをお粥にした場合と普通に炊いた場合とで、食後の血糖値の上がり方に違いがあるのかどうかは、これまで十分にわかっていませんでした。今回紹介する研究は、この素朴だけれど見落とされがちな疑問に、健常な若い成人を対象にした試験で答えようとしたものです。
研究でわかったこと
この研究では、健常な大学生31人(平均年齢20.3歳)を対象に、ランダム化比較クロスオーバー試験という方法が用いられました。参加者は「炊飯米」と「米粥」のいずれかを摂取し、別日にもう一方を摂取するという形で、両方の食品を試しています。炭水化物量はどちらも40.7gに揃えられており、量の違いではなく「形状(粥かごはんか)」の影響だけを比較できるように工夫されています。
血糖の変化は、間質液グルコース値をフラッシュグルコースモニタリング(FreeStyle Libre)という機器で、摂取後120分間、15分ごとに測定しました。また、口の中での処理能力が落ちた状態を模すため、一口あたりの咀嚼回数は10回までに制限されています。
結果として、米粥は炊飯米に比べて、摂取後30分、45分、60分の時点で有意に高い血糖値を示したと報告されています(p<0.01)。また、摂取後0〜30分、0〜60分、0〜90分、0〜120分のいずれの区間でも、血糖値の変化量を積算した指標(iAUC)は米粥の方が有意に大きかったとされています(p<0.05)。一方で、満腹感を尋ねるアンケート(VAS)では、120分後の時点で両者に有意な差は見られなかったとのことです(p=0.1)。
研究者らは、米粥では表面積が増え、でんぷんの糊化(こか)が進みやすいことが、消化・吸収の速さに影響している可能性があると考察しています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この試験の対象者は健常な若い大学生31人であり、高齢者や嚥下機能に問題のある方、糖代謝に異常のある方を直接調べたものではありません。また、今回の測定は間質液グルコース値によるもので、咀嚼回数も研究用に10回までと制限された条件下での結果です。実際の食事場面や、対象者の年齢・健康状態が異なる場合には、結果が変わる可能性も考えられます。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点には留意が必要です。
研究者らは、嚥下調整食が必要な患者さんの栄養管理においては、こうした食品形状による血糖応答の違いを考慮すべきだと述べています。
まとめ
同じ炭水化物量であっても、米粥は炊飯米に比べて食後の血糖値がより早く、より高く上昇する可能性があることが、この研究で示唆されました。満腹感については両者に大きな違いは見られなかったとのことです。お粥が体に優しいというイメージとは異なる面もあり、今後、対象者の幅を広げた研究が期待されるテーマといえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:健常若年成人における米粥と炊飯米の食後血糖応答:ランダム化比較クロスオーバー試験(キュリウス・2026年07月)