脳卒中を発症した後、多くの患者は数か月にわたるリハビリテーション入院が必要になることがあります。こうした長期の療養生活では、体力や回復力を支える『栄養状態』の管理が重要な課題となります。とはいえ、栄養状態を正確に把握するには、問診や採血など手間のかかる評価が必要になることも多く、より簡便で客観的な方法が求められてきました。今回紹介する研究では、体に微弱な電流を流して体組成を測る『生体電気インピーダンス分析(BIA)』という検査から得られる新しい指標『Nutrigram®』が、脳卒中後の患者の栄養状態を評価するのに役立つかどうかが調べられました。
どのような研究が行われたのか
研究の対象となったのは、脳卒中を発症してから比較的日の浅い『亜急性期』にあり、リハビリテーション治療を受けている患者87名です。入院時(研究では『T0』と呼ばれる時点)に、年齢や病歴などの基本情報に加え、栄養に関するさまざまなデータが集められました。
低栄養の診断には、国際的に用いられている『GLIM基準』という基準が使われました。この基準ではまず、栄養リスクがあるかどうかを『MNA-SF®』と『GNRI』という2種類の評価ツールでスクリーニング(ふるい分け)します。そのうえで、BIA検査によって体組成を測定し、そこから算出される新指標『Nutrigram®』の値が記録されました。
研究でわかったこと
解析の結果、Nutrigram®の値は、既存の評価ツールであるMNA-SF®やGNRIのスコアと有意な関連が認められたと報告されています。
さらに、GLIM基準によって低栄養と診断された患者では、そうでない患者に比べてNutrigram®の値が有意に低いことも示されました。具体的には、MNA-SF®によるスクリーニングを経た場合で582.7±156.7(低栄養群)対780.5±208.9(非低栄養群)、GNRIによるスクリーニングを経た場合で566.9±162.3対749.0±207.5と、いずれも統計的に意味のある差(p<0.001)があったとされています。
また、他の要因の影響を調整したうえでの解析でも、Nutrigram®の値は低栄養の診断と独立して関連しており、値が高いほど低栄養である可能性が低いという結果が示されました。これらの結果から、Nutrigram®は脳卒中後の患者における栄養状態を映し出す、客観的な指標となりうる可能性が示唆されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、87名という一つの患者集団を対象とした観察research(観察研究)であり、Nutrigram®という指標が既存の栄養評価ツールや低栄養診断と関連していることを示したものです。あくまで一つの研究であり、この指標を用いることで栄養状態が改善する、あるいは治療成績が向上するといった効果まで確認されたものではない点には注意が必要です。今後、さらに研究が積み重ねられることで、この指標の臨床的な位置づけがより明確になっていくものと考えられます。
まとめ
脳卒中後にリハビリテーションを受ける患者を対象としたこの研究では、BIA検査から得られる新しい指標Nutrigram®が、既存の栄養リスク評価ツールや低栄養の診断と一貫した関連を示すことが報告されました。栄養状態を簡便かつ客観的に把握する手段として、今後の研究の進展が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:脳卒中後リハビリテーション治療を受ける患者コホートにおける栄養状態評価のための新規BIA由来指標Nutrigram®(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)