便秘で悩む日は、なんとなく気分も沈み、夜もうまく眠れない——そんな経験をした人は少なくないはずです。これら三つの不調は「別々の問題」ではなく、腸と脳が互いに信号を送り合う「腸脳軸」と呼ばれる経路でつながっている可能性が、近年の研究で注目されています。そのつながりに、ヨーグルトが作用するかもしれないという報告が出ました。

研究でわかってきたこと

ジャーナル・オブ・ファンクショナル・フーズにオンライン先行公開されたランダム化比較試験では、内モンゴルとチベット由来の乳酸菌を複数組み合わせた特定の発酵ヨーグルト(K-10)を用いた介入の効果が検討されました。乳酸菌とは、糖類などを発酵させて乳酸をつくる細菌の総称で、ヨーグルトやチーズ、みそ、漬け物などに存在します。

試験の結果、K-10ヨーグルトを摂取したグループでは、便秘の重症度を示すスコアが有意に低下し(p<0.001)、中等度以上の不安を訴える参加者の割合も減少したと報告されています。睡眠については全体的な睡眠スコアに群間の有意差はなかったものの、「寝つきにかかる時間」と「睡眠薬への依存度」の二項目では群間に有意な改善が見られました(いずれもp<0.05)。

注目されるのは、腸内で何が起きたかという点です。K-10ヨーグルトを摂ったグループでは、腸内に存在する「バクテロイデス」と呼ばれる細菌群が有意に増加し、同時に「短鎖脂肪酸」——腸の細胞のエネルギー源として働く物質のひとつ——の中でも特に酪酸と酢酸の産生量が増えたと報告されています(p<0.05)。さらに、炎症に関わる指標(TNF-αおよびIL-6)の低下と、酸化ストレスへの抵抗力を示す指標の改善も観察されました。研究グループは、これらの変化が便秘・不安・睡眠の改善と関連している可能性を示唆しています。

ただし、これはあくまで特定の条件下で行われた一試験の結果です。K-10ヨーグルトは特許取得の菌株を用いた特定製品であり、「ヨーグルト全般を食べれば同じ効果がある」と結論づけることはできません。腸脳軸の働きの解明も現在進行形であり、今後さらなる検証が必要な段階です。

ヨーグルトという食品を、データで見る

特定の食品が便秘・不安・睡眠不足を予防したりリスクを下げたりするものではありません。ただ、研究の素材となったヨーグルトという食品を、日本食品標準成分表(八訂)の実測値から確認しておくことは、日々の食選びの参考になります。

ヨーグルト(全脂無糖)は100gあたり56kcal、たんぱく質3.6g。カップ1杯(約210g)では約118kcalです。成分表で特に多いのは乳酸(100gあたり0.7g)と酪酸(100gあたり100mg)です。乳酸は乳酸菌の発酵によってつくられる酸であり、酪酸は今回の研究でも注目された短鎖脂肪酸の一種です(成分表の値は食品中の含有量であり、体内での産生量を示すものではありません)。

ヨーグルト(低脂肪無糖)は100gあたり40kcalと全脂タイプより低カロリーで、乳酸は100gあたり0.8g(全脂の0.7gとほぼ同水準)。酪酸は100gあたり33mgで、全脂の100mgより低くなっています。酪酸は乳脂肪に含まれる短鎖脂肪酸であるため、脂質量が全脂3gに対して低脂肪1gと少ない低脂肪タイプではその分含有量も下がります。カロリーを意識する場面では選択肢になります。どちらも食物繊維は含まれていない(推定値)ため、繊維を補いたい場合は野菜・果物・穀物と組み合わせる食べ方が一般的です。

日々の食事に取り入れるヒント

腸内環境に関心が向くと、何か特別なものを探したくなりがちですが、食事全体のバランスが土台です。発酵食品(ヨーグルト・みそ・漬け物など)、食物繊維を含む野菜・豆・穀物、そして十分な水分——これらを組み合わせることが、腸を支える食事の基本として広く知られています。

朝食にヨーグルトを一杯加えることは、手軽に発酵食品を取り入れる方法のひとつです。無糖タイプに果物や雑穀を合わせると、風味と食物繊維を同時に補えます。一度に大量に食べることよりも、毎日の食卓に小さく続けることが、腸内環境を考えるうえで現実的なアプローチといえるでしょう。

今回の研究は、「毎日の食事が腸を通じて心身のコンディションに関わっているかもしれない」という視点を与えてくれます。どの食品が何に作用するかという短絡的な話ではなく、腸と脳がつながっているという「構造」を知ることが、食事を選ぶ目を少し変えてくれるかもしれません。

栄養バランスのよい食事を続けることが、健康な毎日を支える基本です。特定の悩みが続く場合は、医療機関への相談をお勧めします。

※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。参考文献:Multi-strain fermented yogurt alleviates constipation, anxiety, and sleep disorders via enrichment of Bacteroides: a randomized controlled trial(ジャーナル・オブ・ファンクショナル・フーズ(オンライン先行公開))

栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準