ヨーグルトを買って冷蔵庫にしばらく置いておくと、表面に水っぽい液体(ホエー)がにじみ出てきたり、なめらかさが失われたりすることがあります。これは「離水(りすい)」と呼ばれる現象で、ヨーグルトのタンパク質が作るゲル構造が時間とともに変化することが関係しています。こうした保存中の品質低下をどう抑えるかは、乳製品の研究における身近なテーマの一つです。今回紹介する研究では、緑茶などに含まれる「茶ポリフェノール」という成分と、ヨーグルトを作る際の加熱処理の温度に注目し、これらがヨーグルトのゲル構造や保存中の安定性にどう影響するかを調べています。

研究でわかったこと

この研究では、茶ポリフェノールを0%から0.3%までの濃度でヨーグルトに加え、さらに原料乳を65℃または95℃という2種類の温度で加熱処理してから、セットヨーグルト(容器の中でそのまま固めるタイプのヨーグルト)を作製しました。そのうえで、ゲルの硬さや粘りけに関わる物性(貯蔵弾性率G′、損失弾性率G″、複素粘度η*といった指標)を測定し、顕微鏡でゲルの微細構造も観察しています。

その結果、茶ポリフェノールを加えるとゲルの粘弾性(弾力やねばりの性質)が向上する傾向が見られ、特に95℃で加熱処理した場合にその効果が大きいことが示されました。茶ポリフェノールの濃度が0.2%のとき、ゲルの硬さが最も高く、微細構造も最も均一になったと報告されています。

一方で、65℃という比較的低い温度で加熱処理した場合には、茶ポリフェノールを増やすほどテクスチャー(食感に関わる物性値)が低下し、保水力も下がり、離水が増えるという、ゲルとしては不安定になる方向の結果が見られました。これに対し、95℃で加熱処理し、茶ポリフェノールを0.2%加えたサンプルでは、最も安定した状態を示したとされています。

また、保存期間中の変化も調べられており、すべてのサンプルでpH・保水力・粘度がいずれも低下していく傾向が確認されました。しかし茶ポリフェノールを加えたヨーグルトは、無添加のもの(対照群)と比べてこれらの数値が統計的に有意に高く保たれており(p<0.05)、構造をより良く維持していたことが示唆されています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、茶ポリフェノール0.2%と95℃での加熱前処理を組み合わせることで、ヨーグルトのゲル特性と保存中の安定性が改善されることを示し、茶ポリフェノールが乳製品向けの機能性素材として活用できる可能性を報告するものです。ただし、これは実験室レベルでの一つの研究結果であり、風味や香りへの影響、実際の商品化における課題、他の条件下での再現性などについてはこの要旨だけでは判断できません。特定の食品成分が健康に良い・悪いといった断定ではなく、あくまでゲルの物理的な性質や保存安定性に関するデータであることに留意して読む必要があります。

まとめ

今回の研究は、茶ポリフェノールの添加量と加熱処理の温度という2つの条件を組み合わせることで、ヨーグルトのなめらかさや保存中の品質維持に違いが生まれることを示したものです。特に0.2%の茶ポリフェノールと95℃の加熱処理という組み合わせが、ゲルの安定性という観点では良好な結果を示したと報告されています。今後さらに研究が積み重ねられることで、乳製品における新たな機能性素材としての活用につながるかどうかが見えてくるかもしれません。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:茶ポリフェノールと加熱前処理がヨーグルトのゲル特性および保存安定性に及ぼす影響(フーズ・2026年07月)