妊娠中の食事が生まれてくる子どもの将来の健康にどう関わるのか、多くの研究者が関心を寄せてきました。特に、妊娠前に肥満傾向にある女性への食事介入が、子どもの体づくりや代謝にどのような影響を及ぼすのかは、栄養学の重要なテーマの一つです。今回紹介するのは、妊娠中の食事内容と子どもの脂質(コレステロールなど)や体組成との関係を、9年という長期間にわたって追跡したランダム化比較試験です。
研究でわかったこと
この研究では、妊娠前のBMIが28〜45kg/m2の女性を対象に、「高タンパク質・低グリセミック指数(HPLGI)食」または「中程度タンパク質・中グリセミック指数(MPMGI)食」のいずれかにランダムに割り付け、妊娠中の食事介入を行いました。生まれた208人の子どものうち、114人が9歳時点まで追跡され、空腹時の血液検査に加え、最長14日間の持続血糖モニタリング、そしてDXA法やMRIによる体組成測定が実施されました。
その結果、HPLGI群の子どもは、MPMGI群と比べて総コレステロールが0.30mmol/L高く(P=0.033)、LDLコレステロール(いわゆる「悪玉」コレステロール)も0.24mmol/L高いことが示されました(P=0.031)。また、骨密度についても0.03g/cm2高いという結果でした(P=0.017)。さらに、出生時から9歳までのLDLコレステロールの推移を見ると、両群の差は年齢とともに広がり、より年長になってから顕在化する傾向があることが示唆されています。一方で、血糖の調節や体脂肪量については、両群の間で統計的に有意な差は見られませんでした。
これらの結果から、著者らは「妊娠中の高タンパク質・低グリセミック指数食は、子どもの総コレステロールおよびLDLコレステロールに対して望ましくない影響を及ぼす可能性がある」とまとめており、高タンパク質食が長期的にどのような影響をもたらすのか、その背景にあるメカニズムも含めてさらなる研究が必要だと述べています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、妊娠前に肥満傾向のあった女性とその子どもを対象としたものであり、対象者の条件によって結果が異なる可能性があります。また、追跡できた子どもの数は208人中114人となっており、当初の対象者全員のデータが得られたわけではない点にも留意が必要です。今回得られた「コレステロール値の差」は統計的に意味のある差として報告されていますが、これが子どもの将来の健康状態にどの程度影響するのかについては、この要旨だけでは判断できません。一つの研究であり、結論が確定したわけではないという点を踏まえて読むことが大切です。
まとめ
今回紹介した研究では、妊娠中に高タンパク質・低グリセミック指数食をとった母親から生まれた子どもは、9歳の時点で総コレステロールとLDLコレステロールがやや高い傾向にあったと報告されています。一方で血糖の調節や体脂肪量には明確な差は見られませんでした。妊娠中の食事と子どもの長期的な健康との関係は複雑であり、今回の結果はその一端を示すものとして、今後さらなる研究の蓄積が期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:妊娠中の母親の高タンパク質・低グリセミック指数食が子の脂質プロファイルを悪化させる:ランダム化比較試験(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ニュートリション・2026年07月)