著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、ドイツです。
掲載誌:Frontiers in Psychology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ストレスを一つにまとめずに見るという狙い
空腹を満たす必要がなくても、楽しさを求めたり嫌な気分を和らげたりするために食べることがあります。研究チームはこれを「報酬に駆動された食行動」と呼び、三つの側面に注目しました。満腹でもおいしい物を楽しみのために食べたくなる動機である「快楽的空腹」、特定の食べ物を強く欲しくなりやすい性質である「特性としての食物渇望」、そして食べる量を抑えにくい傾向である「抑制できない食べ方」です。
これまでの研究では、ストレスがこうした食行動と関連するとの報告が重ねられてきましたが、結果は一貫していませんでした。著者らは、その一因として、ストレスを一つのまとまった量として測ってきたことや、体重の状態を十分に考慮してこなかったことを挙げています。そこで本研究では、ストレスの感じ方を二つの側面に分けました。一つは、ストレスの原因を自分では制御できず圧倒されていると感じる「無力感」、もう一つは、ストレスにうまく対処できるという自信を表す「自己効力感」です。この二つがそれぞれ独立に食行動と関連するのか、またその関連がBMIで定めた普通体重の人と肥満の人とで異なるのかを調べました。
質問票で食行動とストレスを測定
研究には成人90人が参加しました。内訳は普通体重47人、過体重18人、肥満(BMI30以上)25人です。主要な分析では、普通体重と肥満の人を比べるため、過体重の人を除いた72人を対象としました。
参加者は一晩絶食した後の朝に来所し、質問票に回答しました。ストレスは広く使われている10項目の「知覚されたストレス尺度」で測り、その項目から無力感と自己効力感の得点を算出しました。快楽的空腹、食物渇望、抑制できない食べ方も、それぞれ専用の質問票で評価しました。
分析では、年齢、性別、BMI、その時点の空腹感の影響を調整したうえで、ストレスと食行動の関連を調べました。無力感と自己効力感は同時にモデルへ入れ、互いに重なり合う部分を差し引いたそれぞれ独自の関連を推定しています。さらに、多くの検定を繰り返すことで偶然の結果が紛れ込むのを抑える補正も行いました。
関連が一貫していたのは「無力感」
主要な分析では、ストレス尺度の合計点は、多重検定の補正後には、どの食行動とも独立した関連を示しませんでした。一方、無力感は、補正後も快楽的空腹の総合点、食物渇望、抑制できない食べ方の強さと独立に関連していました。無力感を感じている人ほど、これらの食行動の傾向が強いという関連です。これに対し、自己効力感は、無力感を考慮に入れると、どの食行動とも独立した関連を示しませんでした。
体重の状態別に見ると、関連は普通体重の人よりも肥満の人の方が記述的にはより一貫して見られました。しかし、BMIや体重区分によって関連の強さが変わるかを正式に検定したところ、多重検定の補正後に有意な結果は残りませんでした。著者らは、BMIや体重の状態がこれらの関連を左右するという確かな証拠は、今回の研究では得られなかったとしています。
ストレスの「中身」を区別する意味
この研究は、ストレスの全体的な強さよりも、「状況をどうにもできない」と感じる無力感という側面が、楽しみを求めて食べる行動と最も一貫して結びついていたことを示しました。ストレスと食行動の関係を考える際には、ストレスをひとまとめにせず、その中身を区別して捉えることが大切だというのが著者らの主張です。なお、今回の結果は一時点で測った関連であり、無力感が食行動を引き起こすことを示したものではありません。
著者:Imke Schamarek(Medical Department III–Division of Endocrinology, Nephrology, Rheumatology, University of Leipzig Medical Center)、Peter Louis Kovacs(German Center for Diabetes Research (DZD))、Michael Stümvoll(Helmholtz Institute for Metabolic, Obesity and Vascular Research (HI-MAG), Helmholtz Center Munich at the Leipzig University and University of Leipzig Medical Center)、Matthias Blüher(Helmholtz Institute for Metabolic, Obesity and Vascular Research (HI-MAG), Helmholtz Center Munich at the Leipzig University and University of Leipzig Medical Center)、Anke Tönjes(LeiCeM - Leipzig Center of Metabolism, University of Leipzig)、Kerstin Rohde‐Zimmermann(German Center for Diabetes Research (DZD))
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Imke Schamarek, Peter Louis Kovacs, Michael Stümvoll, et al. Stress-related helplessness is independently associated with reward-driven eating in adults with BMI-defined normal weight and obesity. Frontiers in Psychology 2026-10-14. DOI: 10.3389/fpsyg.2026.1820806. 原著ライセンス:CC BY.