著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、イタリア、ナイジェリアです。
掲載誌:Frontiers in Oncology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
がん治療を受けている患者さんにとって、「食べられない」「体重が減っていく」といった悩みは珍しくありません。栄養不良や、治療にともなう体の異化亢進(筋肉や脂肪が分解されやすくなる状態)は、治療の効果や経過に影響しうることが知られています。では、栄養面からのサポートは実際にどのような形で行われ、どんな効果が報告されているのでしょうか。今回紹介する論文は、がん患者に対するさまざまな栄養介入を整理した「スコーピングレビュー」と呼ばれるタイプの研究です。
どのような研究方法だったのか
研究チームは、あらかじめ定めた範囲にもとづき、3つの学術データベースを横断して関連文献を包括的に検索しました。対象として選ばれたのは、ランダム化比較試験、パイロット・実行可能性研究、マッチさせたコホート研究のうち、成人がん患者を対象とし、患者や臨床上のアウトカム(結果指標)を報告しているものです。集められたデータは、対象者、介入の内容、比較対象、アウトカム、実行可能性といった項目に整理され、その上で物語的に統合(narrative synthesis)されました。
栄養介入にはどんな種類があったのか
最終的に、カナダ、日本、メキシコ、スペイン、インドなど複数の国で行われた15件の研究が対象として選ばれました。介入内容は次の4つに分類されています。
- 栄養士が主導し、エネルギーやたんぱく質の目標量を数値化したうえで行う栄養カウンセリング
- ホエイプロテイン、オメガ3・EPA強化食品、食べやすく調整した食品などの経口栄養補助食品(ONS)
- 修正アトキンス食のような特定の食事パターン
- 栄養サポートに運動や心理社会的支援、時に抗炎症薬も組み合わせた、多職種による「プレハビリテーション(術前などの体力強化プログラム)」
何が示されたのか
化学療法中においては、EPA(エイコサペンタエン酸)を強化した経口栄養補助食品によって、食欲や食事摂取量、治療の忍容性(治療をどれだけ続けられるか)が改善したと報告されています。一方で、生存率については変化が見られなかったとされています。
また、がん悪液質(進行がんに伴う著しい消耗状態)に対応するプログラムは、実行可能かつ安全であったものの、栄養補助食品への継続率は、運動や薬物療法への継続率に比べて低い傾向がみられたとのことです。さらに、患者の文化的背景に合わせた食品を用いることで、受け入れやすさや生活の質(QOL)が高まることも示唆されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
著者らは、栄養療法はがん治療において実行可能で、臨床的にも意味のある構成要素であると結論づけています。ただし、その効果は状況や介入の実施の質(フィデリティ)によって異なっていたとも述べられています。今後、評価方法の統一化や、補助食品の継続率を高める工夫、費用対効果に関するデータの蓄積が、実際の医療現場への導入や普及、評価の仕組みづくりに必要だとされています。この研究は複数の研究を横断的に整理したレビューであり、個々の介入の効果を厳密に検証したものではない点にも留意が必要です。
まとめ
今回紹介したスコーピングレビューでは、がん治療における栄養介入が、栄養カウンセリングから補助食品、食事パターン、多職種プログラムまで多様な形で行われていることが整理されました。EPA強化補助食品が食欲や治療の続けやすさに関連していた可能性や、文化に合った食品が受容性やQOLに関連していた可能性が示された一方、生存率への影響は認められなかったとされ、今後さらなるデータの蓄積が期待される分野といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):がん管理における栄養介入:包括的スコーピングレビュー(フロンティアーズ・イン・オンコロジー・2026年07月)
著者:Grace Taiwo Otitoju(Department of Molecular and Translational Medicine, Paul Foster School of Medicine, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso, TX, United States)、Uju Maryanne Onuorah(Department of Pharmacy and Health and Nutrition Sciences, University of Calabria, Rende, Italy)、Chinemerem Henry Ugo(Department of Nutrition Sciences, University of Alabama, Birmingham, AL, United States)、Olawale Otitoju(Department of Biochemistry, Federal University Wukari, Wukari, Nigeria)、Jennifer Molokwu(Department of Family and Community Medicine, Paul Foster School of Medicine, Texas Tech University Health Sciences Center, El Paso, TX, United States)