春に釣れる代表的な近海魚でありながら、初夏の今もその味わいの余韻は衰えない。めばる 生。その名の由来は姿かたちにある。目が大きく張り出していることから「めばる」と呼ばれるようになったという、見た目そのままの命名だ。生息する海域によって体の色は赤、金、黒、白などさまざまに変化し、同じ魚とは思えないほどの表情を見せる。
めばる最大の持ち味は、その扱いやすさにある。鮮度がよいものは刺身にしても、煮付けにしても、唐揚げにしても美味しい。刺身で淡白な旨みを楽しんだ翌日には、同じ魚を今度は甘辛い煮付けで、あるいはカラッと揚げた唐揚げで味わう。一尾を無駄なく使い切れる懐の深さが、めばるを家庭料理の名脇役たらしめている。
数字が語る「軽さ」という美点
成分表を開くと、めばるの数字はどれも控えめだ。可食部100gあたりのエネルギーは100kcal。脂質は3.5gと少なく、淡白な白身魚らしい構成になっている。一方でたんぱく質は可食部100gあたり18.1gを含み、これは女性30〜49歳の推奨量50g/日の36%にあたる。刺身でも煮付けでも、脂っこさを感じさせずにたんぱく質をしっかり補える魚、というのがめばるの実力だ。食物繊維は含まれないと推定され、食塩相当量も可食部100gあたり0.2gとごくわずか。魚そのものの味を活かす味つけがよく似合う理由も、このあたりにありそうだ。
一尾まるごと選ぶなら、目安量は1尾=200g。可食部100gあたりの数値をもとに考えれば、一尾でどれだけの食べごたえがあるかが見えてくる。刺身で数切れ、煮付けで一尾まるごと——食べ方によって口に運ぶ量は変わるが、低エネルギーで高たんぱくという骨格は変わらない。晩酌の肴にも、夕食の主菜にも収まりのよい魚だといえる。
おいしい一尾の選び方
せっかくの春告げ魚だから、鮮度のよい一尾を選びたい。めばるを選ぶときは、目に濁りがなく、澄んだものを目印にするとよいとされる。大きさは17〜18cmくらいのものがいちばん脂がのっているといわれ、一尾丸ごとの持ち味を楽しむにはちょうどよいサイズだ。すぐに使わないときは、ラップやフリーザーバッグでなるべく空気に触れないように包んで冷凍しておけば、鮮度を保ちやすい。
刺身、煮付け、唐揚げ——一尾でこれだけの表情を見せてくれる魚は、そう多くない。鮮度がよいうちに食べたいというのが、めばるという魚の一番の贅沢な楽しみ方だろう。今日の食卓に、控えめな数字と豊かな食べ方を両立するこの春告げ魚を迎えてみてはどうだろうか。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。
栄養素のはたらき・摂取基準の記述は、次の公的資料に基づきます:厚生労働省 食事摂取基準