近年、環境負荷の少ないタンパク源として食用昆虫が注目されています。ただし、昆虫をそのままの姿で食べることに抵抗を感じる人は少なくありません。そこで考えられている工夫のひとつが、ソーセージやハンバーグのような食肉製品、あるいは大豆などから作られる代替肉(ミートアナログ)に昆虫の粉末などを混ぜ込み、食べ慣れた食品を通じて昆虫由来の栄養を取り入れてもらうという方法です。今回紹介する論文は、こうした「昆虫入り食肉・代替肉製品」に関するこれまでの研究を集めて整理した、システマティックレビューと呼ばれるタイプの研究です。

研究でわかったこと

研究チームは、PubMed、ScienceDirect、Scopusという学術データベースを対象に2025年11月5日時点で関連論文を検索し、条件に合う25本の論文を対象として分析しました。目的は、食用昆虫を食肉製品や代替肉製品に加えたときに、栄養成分、物理化学的な性質、テクノ機能特性(食品としての加工特性や食感などに関わる性質)、そして消費者の受け入れやすさにどのような影響が出るのかを整理することでした。

取り上げられた昆虫としては、ミールワーム、コオロギ、バッタ、カイコのさなぎ、スーパーワームなどが多く使われていました。添加先の食肉製品としては、豚肉や牛肉のソーセージ、豚肉パティ、食肉乳化物(ミートエマルジョン)、フランクフルトなどがよく報告されており、代替肉の分野では大豆粉(ソヤフラワー)を使った製品が多く扱われていました。

全体としては、昆虫を加える量によって受け入れられ方が変わる傾向が示されています。牛肉や豚肉を使った従来型の食肉製品では、おおむね2.5〜10%程度までの低い置き換え割合であれば許容されやすいものの、それを超えると風味や食感、構造的な品質が低下しやすいことが報告されています。一方で、大豆由来の代替肉のような製品では、10〜40%程度、場合によっては60%近くまで昆虫を加えても許容される例があったとされています。つまり、同じ「昆虫入り食品」でも、ベースとなる食品の種類(マトリックス)によって、どこまで昆虫を混ぜられるかが大きく異なるということが、この研究のポイントの一つといえそうです。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この論文は、個々の実験を新たに行ったものではなく、すでに発表された25本の研究結果を集めて比較・整理したレビュー論文です。そのため、元になった研究ごとに昆虫の種類や添加量、製品の配合、そして消費者による官能評価(味や食感の評価)の方法が異なっており、研究間で結果を単純に直接比較することには限界があると論文中でも述べられています。今回示された「2.5〜10%」「10〜40%、最大60%程度」といった数値も、あくまで複数研究から見えてきたおおよその傾向であり、すべての昆虫・製品の組み合わせに一律に当てはまるものではない点に注意が必要です。

また、この研究は昆虫を加えた際の栄養面や物理的な特性、消費者の受け入れやすさを扱ったものであり、健康への効果や安全性そのものを検証したものではありません。あくまで一つのレビュー研究であり、これによって結論が確定したわけではない点も踏まえて読んでいただければと思います。

まとめ

今回のレビューでは、ミールワームやコオロギといった食用昆虫を、ソーセージなどの食肉製品や大豆ベースの代替肉に混ぜ込む研究が横断的に整理されました。従来の食肉製品では低い割合、代替肉ではより高い割合まで昆虫を加えられる可能性が示唆されていますが、研究ごとの手法の違いから明確な結論を一般化するには限界があるとされています。食用昆虫を身近な食品に取り入れる工夫は、今後も研究が積み重ねられていく分野といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食肉ベース製品および代替肉製品への食用昆虫添加が栄養組成、テクノ機能特性、消費者受容性に与える影響:システマティックレビュー(フーズ・2026年07月)