著者の所属・活動拠点の国は、フィリピンです。

掲載誌:International Journal of Sustainable and Integrated Studies

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

フィリピンの基礎教育には、実生活や将来の仕事に役立つ実践的な技能を育てる「技術・生活教育(TLE)」という教科があります。その中の調理分野では、食材の下ごしらえ、加熱調理、盛り付け、衛生管理などを学びます。

著者は、実習に参加したことと技能を身につけたことは同じではないと考えました。そこで、マスバテ州アロロイにあるプーロ国立高校の10年生を対象に、調理技能の習得度を「下ごしらえ」「調理」「盛り付け」「衛生」の4領域に分けて調べました。あわせて、生徒がつまずいている点を明らかにし、年齢・性別・調理経験の有無によって習得度に違いがあるかも検討しています。目的は、授業改善の手がかりを得ることです。

調査の方法

対象は、2025〜2026年度に調理を履修していた10年生30人です。調査期間中に協力できた生徒を対象とする方法で選ばれ、配布した質問票はすべて回収されました。回答者の内訳は、女子が25人、男子が5人です。また、22人が授業以前にも調理経験があると答えました。

質問票は著者が作成したもので、調査対象外の教員や校長による確認を経て修正されています。各項目について、生徒は「とてもそう思う(4)」から「まったくそう思わない(1)」までの4段階で答えました。回答を項目ごとに重み付けして平均した値で習得の程度や困りごとの強さを表し、属性の異なるグループ間に意味のある差があるかどうかは統計的な検定で確かめています。

主な結果

4領域のうち、平均値が最も高かったのは衛生の3.50でした。特に「調理前後の手洗い」は3.83と、全項目の中でも高い値です。調理場の清潔維持や器具の消毒も高く評価されていました。一方、衛生の中でも「生の食品と加熱済みの食品を分ける」と「食品安全の基準を一貫して守る」は相対的に低めでした。

下ごしらえの平均は3.33で、衛生に次ぐ高さでした。調理前に材料をそろえることやレシピに従うことは高い値でしたが、決められた時間内に準備を終えることや、手際よく整然と準備することは低めでした。

調理(3.08)と盛り付け(3.07)は、おおむね満足できる水準と解釈されています。ただし調理では「火の通しすぎや生焼けを避ける」が2.77、盛り付けでは「時間内に盛り付けを仕上げる」が2.73と、それぞれの領域で最も低い値でした。

困りごとについての質問では、「完成品の飾り付けが難しい」への同意の度合いが平均3.00と最も高くなりました。次いで、時間内の下ごしらえ、一人で作業をこなす自信のなさ、焼き時間や温度の管理が続きます。反対に「衛生や手洗いを忘れてしまう」への同意は平均2.50と最も低く、衛生面のつまずきは少ないという結果でした。

また、年齢・性別・調理経験などの属性によって習得度に統計的に意味のある差は見られませんでした。

この研究が示すこと

この調査から、対象の生徒たちは衛生と下ごしらえの基本をよく身につけている一方、時間の管理、加熱の加減、盛り付けや飾り付けの仕上げに課題があることがうかがえます。著者はこれを踏まえ、実演や実習の機会を増やすこと、時間を区切った調理練習を取り入れること、一人で取り組む課題で自信を育てることを提案しています。あわせて、良好な衛生習慣を今後も維持することも勧めています。

なお、これは一校の30人を対象とした調査です。著者自身も、結果はこの学校の状況を示すもので、フィリピンの10年生全体に当てはまるものではないと述べています。技能の強みと弱みを領域ごとに見分けることで、授業で重点的に取り組むべき点を具体的に絞り込めることを示した研究といえます。

原著論文の著者・所属:Aris C. Abada(Puro National High School, Brgy. Puro, Aroroy, Masbate, Philippines)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Aris C. Abada. Level of Mastery in Cookery Skills among Grade 10 Students at Puro National High School: Basis for Instructional Enhancement. International Journal of Sustainable and Integrated Studies 2026-10-01. DOI: 10.65339/ijsis.v1.i3.138. 原著ライセンス:CC BY.