アメリカでは5年ごとに国の「食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans)」が改定され、健康的な食生活の指針として広く参照されています。2025-2030年版では、加工度の低い栄養密度の高い食品が重視され、動物性たんぱく質や脂質が推奨される一方、糖類や精製穀物、食品添加物、超加工食品は控えるよう位置づけられています。こうした指針は栄養学的には理にかなっていても、実際に日々の食卓でそれを実行するとなると気になるのが「結局いくらかかるのか」という現実的な問題です。今回紹介する研究は、この新しいガイドラインに沿った食事を実際の食品価格に基づいて試算し、家計への影響を検討したものです。
どのように費用を見積もったのか
研究チームは、2026年にシアトルのスーパーマーケットで実際に販売されている食品の価格を用い、2025-2030年版ガイドラインが推奨する分量を積み上げて「食品バスケット」の費用を算出しました。計算の基準は、成人の目安とされる1日2000kcalの食事です。ガイドラインが定める各食品グループ(たんぱく質食品、乳製品、穀物、野菜、果物など)の推奨サービング数に、実際の店頭価格を当てはめる形で、1日あたりの総費用が見積もられています。
費用の中身とたんぱく質食品の位置づけ
試算の結果、2025-2030年版ガイドラインに沿った食品バスケットの平均費用は1日あたり15.82ドルで、この構成で得られるエネルギー量は中央値で1997kcal、たんぱく質は74.4gと、目標とされる2000kcalにほぼ近い値になりました。食品グループの中で最も費用がかさんだのはたんぱく質食品で、平均で1日あたり6.47ドルを占めていました。さらに研究では、たんぱく質食品3.5サービング分の費用を食材ごとに比較しており、レンズ豆では1日あたり0.83ドルと際立って安価だったのに対し、魚介類では14.37ドル、牛肉では18.55ドルと、選ぶ食材によって費用に大きな開きが生じることが示されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この試算はシアトルという特定の地域の、ある時点でのスーパーマーケット価格に基づくものであり、著者らも、ガイドラインの実施にあたっては全国レベルの食品価格を用いたより正式な費用推定が必要だと述べています。また、最も費用の低い健康的な食事プランとして知られる「Thrifty Food Plan(低価格食品プラン)」についても、新しい2025-2030年版ガイドラインと整合する形での更新が必要だと指摘されています。つまりこの研究は、新指針を実践する際の費用感を示す一つの手がかりであり、地域や時期が異なれば結果も変わりうる点には注意が必要です。日本の読者にとっても、たんぱく質源の選び方一つで食費が大きく変わりうるという点は、豆類や魚介類、肉類のバランスを考えるうえで参考になる視点といえるでしょう。
まとめ
2025-2030年版アメリカ食事ガイドラインに沿った食生活は、シアトルでの試算では1日あたり平均15.82ドルとなり、その中でもたんぱく質食品の選択、特にレンズ豆のような植物性食品と牛肉や魚介類のような動物性食品の違いが、費用を大きく左右することが示されました。健康的とされる食事指針を実際に無理なく続けられるかどうかは、栄養面だけでなく家計面からも検討する必要があることを、この研究は示唆しています。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Adam Drewnowski, Andy Santos. The Estimated Cost of the New 2025-2030 Dietary Guidelines Market Basket. ニュートリション・トゥデイ (2026). DOI: 10.1097/nt.0000000000000829.