卵は手軽に食べられる身近な食品ですが、近年は「特定の栄養素を強化した卵」も登場しています。ミネラルの一種であるセレンを強化した卵や、抗酸化物質として知られるゼアキサンチンを強化した卵は、糖尿病のある人の血糖や脂質の状態にどのような影響を与えるのでしょうか。今回紹介するのは、2型糖尿病の患者を対象に、セレン強化卵とゼアキサンチン強化卵を12週間食べ続けてもらい、その効果を比較したランダム化比較試験です。フロンティアーズ・イン・ニュートリション誌に2026年07月に掲載予定の論文をもとに紹介します。

研究でわかったこと

研究チームは、2型糖尿病の患者58名を2つのグループに分け、一方には「セレン強化卵」(27名)、もう一方には「ゼアキサンチン強化卵」(31名)を1日2個、12週間にわたって食べてもらいました。介入の前後で空腹時の血液を採取し、血糖値や脂質の変化を調べています。

その結果、両グループともに、空腹時血糖値、インスリン抵抗性を示す指標(HOMA-IR)、そして中性脂肪と血糖の関係を示す指標(TyG指数)が、介入後に有意に低下したと報告されています。さらに、介入開始前のHbA1c(過去1~2か月の血糖の平均的な状態を示す指標)が8.9%未満だった参加者に限定すると、両グループとも血糖・脂質の代謝状態がより改善する傾向がみられたとされています。

グループ間の違いとしては、ゼアキサンチン強化卵グループで中性脂肪の値が有意に低下したこと(p = 0.0007)、また膵臓のβ細胞機能を示す指標(HOMA-β)の上昇傾向(p = 0.06)が示されています。一方、HbA1cについては、介入後に2つのグループの間で有意な差は見られなかったとのことです。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、セレン強化卵とゼアキサンチン強化卵が、2型糖尿病患者の血糖代謝プロファイルの改善において同程度の効果を持つことを示すものであり、特にベースラインのHbA1cが低い人でより効果が高い可能性が示唆されています。また、ゼアキサンチン強化卵については中性脂肪を下げる可能性も示唆されています。

ただし、これは一つの研究であり、結論が確定したわけではありません。参加者は58名という限られた人数であり、糖尿病のある方全般に同じ効果が当てはまるとは限りません。また、要旨で示されている以上の詳しい試験条件や長期的な影響については、この記事の範囲を超えるため触れていません。特定の食品を治療や予防の手段として捉えるのではなく、あくまで一つの研究知見として参考にしていただければと思います。

まとめ

今回紹介した研究では、セレン強化卵とゼアキサンチン強化卵のいずれも、2型糖尿病患者の空腹時血糖やインスリン抵抗性、TyG指数の改善と関連していたことが報告されました。特にゼアキサンチン強化卵では中性脂肪の低下も示唆されており、今後さらなる研究の広がりが期待されるテーマといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:2型糖尿病患者におけるセレン強化卵とゼアキサンチン強化卵の血糖・脂質応答:12週間ランダム化比較試験(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)