入院中の食事は、治療そのものではないけれど、患者の回復や入院生活の満足度に関わる大切な要素です。しかし「メニューが期待と違った」「もう少しスタッフの対応が良ければ」といった小さな不満は、意外と見過ごされがちです。今回紹介する論文は、病院の栄養サービス(食事提供サービス)に対する患者の満足度を、2つの分析手法を組み合わせて詳しく調べたものです。

サービスの質を測る手法として知られる「SERVQUAL」は、利用者が「どのくらい期待していたか」と「実際にどう感じたか」の差(ギャップ)を、信頼性・反応性・確実性・共感性・有形性といった複数の側面から数値化する方法です。もう一つの「カノモデル」は、各サービス要素が満足度にどう影響するかを分類する手法で、たとえば「あって当たり前」の要素なのか、「あれば嬉しい」要素なのかを区別できます。この論文では、この2つを組み合わせることで、病院栄養サービスのどこを優先的に改善すべきかを浮き彫りにしようとしています。

研究でわかったこと

この研究は、西ジャワの病院に入院し、少なくとも2日間栄養サービスを受けた患者99名を対象とした横断的な調査です。対象者は目的に応じて選ばれる方法(purposive sampling)で集められ、SERVQUALとカノモデルそれぞれの質問票を用いてデータが収集されました。

SERVQUAL分析の結果、調べられたすべての品質の側面で「マイナスのギャップ」が見られました。つまり、患者が実際に感じたサービスの水準が、事前に抱いていた期待を下回っていたことを示しています。中でもギャップが大きかったのは、確実性(スタッフの知識や信頼感に関わる側面、ギャップ値マイナス0.90)、反応性(要望への対応の速さなどに関わる側面、マイナス0.88)、共感性(患者一人ひとりへの気配りに関わる側面、マイナス0.87)の3つで、これらが優先的に改善すべき領域として示唆されています。

一方カノモデル分析では、多くのサービス要素が「魅力的品質」(あれば満足度が大きく上がる要素)または「一元的品質」(充実度が満足度に比例して直接影響する要素)に分類されました。具体的には、メニューの質、食事の見た目(盛り付け)、スタッフの親しみやすさ、対応の迅速さといった要素を改善することが、患者満足度を高める上で特に効果が大きい可能性があると報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、西ジャワのある病院で入院患者99名を対象に行われた一つの調査であり、結果がすべての病院や地域に当てはまると断定されたものではありません。また、対象者の選び方は無作為ではなく目的に応じたサンプリングであるため、結果の解釈には一定の幅を持たせる必要があります。あくまで、SERVQUALとカノモデルを組み合わせた分析手法が、病院栄養サービスの改善点を体系的に洗い出すうえで有効であることを示した一つの研究として捉えるのが妥当でしょう。

まとめ

この研究では、病院の栄養サービスに対して患者の期待が実際の体験を上回っている(つまり不満につながりやすい)ことが、SERVQUALのすべての側面で確認されました。特に確実性・反応性・共感性の改善余地が大きいとされ、カノモデルの結果と合わせると、メニューの質や見た目、スタッフの対応の丁寧さや迅速さが、患者満足度向上の鍵を握る要素として示唆されています。入院中の「食」を支えるサービスのあり方を考えるうえで、興味深い視点を提供してくれる研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:病院栄養サービスにおけるサービス品質ギャップの橋渡し:SERVQUALとカノモデルを統合した分析(グロサインス・ジャーナル・サインス・グローバル・インドネシア・2026年07月)