著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

ビタミンDは骨の健康などに関わる栄養素として知られていますが、実は日光を浴びることで皮膚でも作られるという、他の栄養素とは少し違う性質を持っています。そのため、食事の内容だけでなく、屋外で過ごす時間や運動習慣といった「生活スタイル」が、体内のビタミンD量に影響するのではないかと考えられています。今回紹介する研究は、中国北部・河北省で健康診断を受けた一般成人を対象に、ビタミンDの不足状況と、それに関連する日常的な行動要因を調べたものです。

どのような研究か

この研究は、中国河北省で定期健康診断を受けた成人4,811人を対象とした横断研究です。ビタミンDの代謝に影響する主要な慢性疾患が確認されている人はあらかじめ除外し、「一見健康な」成人を対象としている点が特徴です。血液検査で血清中の25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]濃度を測定し、この値が20 ng/mL未満の場合を「ビタミンD欠乏」と定義しました。あわせて構造化された質問票を用いて、日光曝露の時間、身体活動量、食事からのビタミンD摂取、ビタミンDを含むサプリメントの使用状況についても情報を集めています。これらの行動要因とビタミンD欠乏との関連は、性別・年齢層・喫煙状況・飲酒・BMIの区分・採血季節を統計的に調整したうえで、多変量ロジスティック回帰という手法を用いて解析されました。さらに、好ましいとされる行動要因(十分な日光曝露、中〜高強度の身体活動、十分な食事摂取、サプリメント使用)がいくつ当てはまるかを合計した「累積行動スコア」を作成し、その数と欠乏リスクとの関係も検討しています。

わかったこと

解析の結果、血清25(OH)D濃度の中央値は20.5 ng/mL(四分位範囲15.4〜26.6)で、参加者全体の47.5%がビタミンD欠乏の基準に該当していました。一方で、十分な状態(欠乏ではない状態)にあったのは15.3%にとどまっていたと報告されています。欠乏の割合は、女性、若年〜就労世代、そして冬季に健診を受けた人でより高い傾向が見られました。

行動要因との関連を見ると、1日30分以上の日光曝露がある人は、そうでない人に比べて欠乏のオッズ(起こりやすさの指標)が低く(オッズ比0.677)、中〜高強度の身体活動がある人(オッズ比0.773)、食事からのビタミンD摂取が十分な人(オッズ比0.734)、ビタミンDを含むサプリメントを使用している人(オッズ比0.797)も、それぞれ欠乏のオッズが低いことが示されました。いずれも他の要因を調整したうえでの結果です。さらに、これら好ましい行動要因が0個の人と比べて、4個すべて当てはまる人では欠乏のオッズが大きく低下しており(オッズ比0.285)、当てはまる要因の数が多いほど段階的にオッズが下がるという関連が観察されたとされています。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、特定の疾患を持たない一般的な健診受診者においても、ビタミンD欠乏が非常に高い割合で見られたことを示すものです。研究チームは、この分布のパターンが、日光という環境要因だけでなく、日々の生活習慣が紫外線を効果的に浴びる機会をどれだけ確保できているかによって左右される、「屋内生活様式」という枠組みと合致すると論じています。

ただし、これは特定の地域・時点における横断研究であり、行動要因とビタミンD欠乏との「関連」が示されたものであって、日光を浴びる時間を増やせば欠乏が改善する、といった因果関係を直接証明したものではない点には注意が必要です。また対象は中国北部・河北省の健診受診者であり、異なる地域や集団にそのまま当てはまるとは限りません。一つの研究であり、結論が確定したわけではないことを念頭に置いて読むとよいでしょう。

まとめ

この研究では、中国北部で健康診断を受けた一見健康な成人のうち約半数にビタミンD欠乏が見られ、特に女性、若年〜就労世代、冬季にその傾向が強かったと報告されています。また、日光曝露、身体活動、食事からの摂取、サプリメント使用といった行動要因が多く当てはまるほど、欠乏のリスクが段階的に低くなるという関連も示唆されました。ビタミンDと生活習慣の関係を考えるうえで、興味深い手がかりを与えてくれる研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):中国北部の一見健康な成人におけるビタミンD欠乏:行動的相関因子と屋内生活様式の枠組み(フロンティアーズ・イン・パブリックヘルス・2026年07月)

著者:Jin Tian(Hospital Management Innovation Research Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Xiaojing Yan(Health Management Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Yongjian Liu(Health Management Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Yongchao Song(Public Health Department, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Yizhou Ji(Department of Radiology and Nuclear Medicine, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Baogen Zhao(Department of Radiology and Nuclear Medicine, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Yujing Mi(Medical Laboratory Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Xiaolong Li(Department of Traumatic Surgery, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Liya Jiao(Health Management Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Li Yang(Health Management Center, The First Hospital of Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Longmei Tang(Department of Social Medicine and Health Services Management, Faculty of Public Health, Hebei Medical University, Shijiazhuang, Hebei, China)、Longmei Tang(Hebei Province Key Laboratory of Environment and Human Health, Shijiazhuang, Hebei, China)