ヨーグルトなどの発酵乳は身近な食品ですが、発酵させる前の牛乳を高温でしっかり加熱する、あるいは「焼く」ように処理してから発酵させるとどうなるのでしょうか。高温加熱すると、食品の風味や色を変化させる「メイラード反応」という化学反応が進みやすくなります。この反応は香ばしさや機能性成分を生み出す一方で、好ましくない副産物を生じる可能性も指摘されています。今回紹介する研究は、この「焼成発酵乳(baked fermented milk, BFM)」と、通常の作り方による「伝統的発酵乳(traditional fermented milk, TFM)」を比較し、さらにプロビオティクス(乳酸菌などの生きた微生物)を加えた場合の違いを、ラットを用いた実験で調べたものです。

研究でわかったこと

この研究では、牛乳を90℃で5分間加熱したものと、115℃で20分間「焼成」したものをそれぞれ用意し、スターター菌を加えて発酵させました。さらにそれぞれの半量にプロビオティクス(Bifidobacterium bifidum NRRL B-41,410とLacticaseibacillus rhamnosus NRRL B-442)を加え、TFM・プロビオティクス入りTFM(PTFM)・BFM・プロビオティクス入りBFM(PBFM)の4種類を作りました。雄のウィスター系アルビノラット35匹を5群に分け、液体乳を与える対照群と、これら4種の発酵乳を与える群に分けて45日間飼育し、理化学的な性質と体への影響を調べています。

理化学的な分析では、BFMはTFMに比べて5-HMF(加熱によって生じる成分)の含量が多く、抗酸化活性も高いことが示されました。また、ジアセチル(発酵乳特有の香り成分)の量がわずかに多い一方、見かけの粘度は低いという結果でした。

生体への影響については、BFMを与えたラットでは血清中のグルコース(血糖)値と酸化ストレスの指標が低下したと報告されており、体重増加や血中脂質、タンパク質量への悪影響は見られなかったとされています。ただし、BFMを与えた群では血清ASAT活性(肝機能などに関わる酵素)と尿素値がもっとも高くなったことも示されました。

プロビオティクスを加えたPBFM群では、これらの変化にさらなる相乗効果が見られたとされています。具体的には、グルコース値のさらなる低下、脂質プロファイルの改善、酸化ストレスの軽減、体重増加の抑制に加え、BFMで見られた血清尿素やASAT活性の上昇が緩和されたと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまでウィスター系アルビノラットを用いた動物実験であり、ヒトでも同様の結果が得られるかどうかは、この要旨の情報だけでは分かりません。また、BFMは血糖値や酸化ストレスの面で興味深い変化を示した一方、ASATや尿素値の上昇といった留意すべき変化も報告されており、著者らはプロビオティクスの併用によってこうした変化が緩和されると述べています。一つの研究であり、結論が確定したものではない点に留意して読んでいただければと思います。

まとめ

牛乳を高温で加熱・焼成してから発酵させる「焼成発酵乳」は、通常の発酵乳と比べて抗酸化活性などの理化学的な特性に違いが見られ、動物実験では血糖値や酸化ストレスに関する変化とともに、肝機能や腎機能に関わる指標への影響も報告されました。プロビオティクスを組み合わせることで、これらの変化のバランスが改善する可能性が示唆されています。発酵乳の作り方ひとつでも、成分や体への影響に違いが生まれうるという点で、今後の研究の展開が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:焼成発酵乳と伝統的発酵乳の比較研究:ウィスター系アルビノラットにおける理化学的特性と生物学的効果(サイエンティフィック・リポーツ・2026年07月)