著者の所属・活動拠点の国は、ソマリアです。
掲載誌:Cogent Food & Agriculture
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ソマリアでは干ばつと紛争が重なって起きています。著者らによると、世帯単位のデータを用いて、避難、干ばつ、水へのアクセスの三つを同時に食料不安の要因として検討した研究は、これまでありませんでした。
この研究は、国内避難民(国境を越えずに国内で避難している人々)の世帯がどの程度食料不安に陥りやすいのか、また避難の原因が干ばつか紛争かによって違いがあるのかを調べることを目的としています。
何をどのように調べたか
研究チームは、ソマリアの家計調査「ソマリア統合家計予算調査2022」のデータを使いました。対象は6,441世帯で、そのうち避難の原因が記録されている国内避難民世帯は111世帯でした。
食料不安の程度は、FIES(食料不安経験尺度)に基づく7項目の尺度で測りました。分析では、環境条件や世帯の特徴、地域ごとの違いの影響を考慮したうえで、避難民世帯とそれ以外の世帯の食料不安を比較しました。調査の抽出方法を反映させた重み付けを行い、複数の統計モデルで結果を確かめています。
主な結果
国内避難民世帯は、そうでない世帯に比べて食料不安の尺度で1.63点高く、他の要因や地域の違いを考慮した後でも0.98点高いという結果でした。中程度から重度の食料不安に陥るオッズ(起こりやすさの比率)は3.76倍で、確率にすると30.6ポイント高いと報告されています。
干ばつによって避難した世帯と紛争によって避難した世帯とでは、食料不安の高まりに統計的な差は見られませんでした。
一方、食料不安が低いことと最も強く関連していたのは、清潔な調理用燃料を使っていることでした。水へのアクセスが改善されていることも食料不安の低さと関連していましたが、それは地域ごとの違いを考慮した場合や、農村部の世帯に限った場合に限られていました。また、避難民世帯の食料不安の高さは主に都市部に集中していました。
研究が示す意味
著者らは、避難の原因が干ばつであれ紛争であれ、避難そのものが食料不安の悪化と結びついていると結論づけています。これは、気候による避難を紛争による避難より二次的なものとして扱う考え方に疑問を投げかけるものだとしています。
そのうえで著者らは、清潔な調理用燃料、農村部の水インフラ、都市部の避難民の定住支援を、取り組みうる手立てとして挙げています。ただし、この研究は一時点のデータに基づく関連を示したもので、因果関係を示したものではないことを著者ら自身が明記しています。
原著論文の著者・所属:Mohamed Hassan Mohamed(Faculty of Economics, Department of Statistics, SIMAD University)、Abdimalik Mohamed Hassan(Faculty of Economics, Department of Statistics, SIMAD University)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mohamed Hassan Mohamed, Abdimalik Mohamed Hassan. Climate-induced displacement and household food insecurity in Somalia: the role of drought, water access, and environmental shocks. Cogent Food & Agriculture 2026-10-17. DOI: 10.1080/23311932.2026.2748146. 原著ライセンス:CC BY.