著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
搾りかすを粉末にするときの「細かさ」を問う研究
ブルーベリーを搾ってジュースやワインを作ると、果皮や種などを含む固形の搾りかすが残ります。論文によると、搾りかすは生のブルーベリーの重さの20〜30%を占め、果実由来の成分や香りを多く残しています。一方で、現状では堆肥や飼料、廃棄といった価値の低い使い道が中心だと著者らは指摘しています。乾燥して粉末にすれば、食品の素材として活用できる可能性があります。
ただし、従来の方法で作った粉末は口当たりが粗く、成分が溶け出しにくく、香りも弱くなりがちだとされています。そこで研究チームは、粉砕の細かさを段階的に変え、粉の粒子の構造がどう変わるか、それに伴ってポリフェノール類の溶け出しやすさ、香り、色がどう変わるかを調べました。
粗く砕いた粉と、ボールミルで時間を変えて砕いた粉を比較
研究チームは、ブルーベリーを搾った後の搾りかすを40℃の熱風で乾燥させ、これを材料にしました。一つは一般的な粉砕機で粗く砕いた粉です。ほかは、凍結させた搾りかすを硬い小球と一緒に容器に入れて回転させる「ボールミル」で、5分、10分、20分、30分と時間を変えて砕いた粉です。
著者らは粒の大きさを、植物の組織がまとまって残る「植物スケール」(500マイクロメートル超)、組織がばらばらになる「組織スケール」(100〜500マイクロメートル)、細胞の大きさに近い「細胞スケール」(10〜100マイクロメートル)の三段階で捉えました。そのうえで、粒の大きさの分布、粒の表面積や内部の微細な穴(細孔)の量を測りました。さらに、粉を25℃の水に浸して、ポリフェノールとフラボノイドがどれだけ溶け出すかを30分間追跡しました。香り成分の分析と色の測定も行っています。
主な結果――成分の溶け出しは中間の細かさが最も高かった
ボールミルの時間が長くなるほど、粒は小さくなりました。粒の中央的な大きさは、粗く砕いた粉では約293マイクロメートルでした。これが、20分では約23マイクロメートル、30分では約22マイクロメートルまで小さくなりました。30分では、ほぼすべての粒が細胞スケールに入りました。粉1グラムあたりの表面積と細孔の量も、粉砕が進むにつれて増えました。論文はこれを、組織や細胞が壊れて内部の穴が表に出たためと説明しています。
水への溶け出しを見ると、20分砕いた粉が、ポリフェノールとフラボノイドのいずれでも最も多い値を示しました。一方、30分まで砕くと溶け出す量はかえって減りました。著者らはその理由として、粉砕で生じる熱による分解のほか、酵素による酸化や、表面積の増加で酸素に触れやすくなったことが関わっている可能性を挙げています。また解析の結果、成分の溶け出しは細孔の量が多いほど多く、粒が小さいほど多いという相関が見られました。
香りについては、粉全体で45種類の揮発性成分が見つかりました。粉砕時間が長くなるにつれて減る成分と増える成分があり、細胞スケールまで砕いた粉では、果実のような香りや焙煎したような香りに関わる成分が増えていました。研究チームは、構造の変化で香り成分が放出されやすくなったことに加え、粉砕中にたまる熱による反応も影響した可能性があるとしています。
色については、粉砕によって明るさと赤みが増しました。ただし変化は一方向ではなく、10分砕いた粉で最も明るく赤みが強くなり、20分と30分ではやや戻りました。それでも、どの粉砕条件でも、粗く砕いた粉との色の差は目で見て分かる程度とされる水準を超えていました。
「細かいほど良い」とは限らない
著者らは、粒の構造、成分の溶け出し、香り、色を総合的に考え、20分の粉砕が搾りかすの粉末化に適していると結論づけています。この条件では、粒の多くが10〜100マイクロメートル、一部が100〜200マイクロメートルに収まります。色だけを見れば10分が最も良い結果でしたが、成分の溶け出しは20分で最も高く、それ以上砕いても上積みはありませんでした。
この研究は、搾りかす粉末の性質が粉砕の細かさによって大きく変わり、最も細かく砕くことが最善とは限らないことを示しました。副産物を食品素材として生かすうえで、目的に合わせて粉砕の度合いを選ぶことが大切だと伝えています。
原著論文の著者・所属:Yang Zhang(Tianjin Key Laboratory of Food Biotechnology, College of Biotechnology and Food Science, Tianjin University of Commerce, Tianjin 300314, China)、Houmeng Liu(Tianjin Key Laboratory of Food Biotechnology, College of Biotechnology and Food Science, Tianjin University of Commerce, Tianjin 300314, China)、Yijing Yang(Tianjin Key Laboratory of Food Biotechnology, College of Biotechnology and Food Science, Tianjin University of Commerce, Tianjin 300314, China)、Lingyi Li(Tianjin Key Laboratory of Food Biotechnology, College of Biotechnology and Food Science, Tianjin University of Commerce, Tianjin 300314, China)、Wenqiang Guan(Tianjin Key Laboratory of Food Biotechnology, College of Biotechnology and Food Science, Tianjin University of Commerce, Tianjin 300314, China)、Qiang Zhang(Henan Key Laboratory of Fruit and Cucurbit Biology, Zhengzhou Fruit Research Institute, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Zhengzhou 450009, China)、Zhonggao Jiao(Henan Key Laboratory of Fruit and Cucurbit Biology, Zhengzhou Fruit Research Institute, Chinese Academy of Agricultural Sciences, Zhengzhou 450009, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yang Zhang, Houmeng Liu, Yijing Yang, et al. Effects of Microstructural Changes on the Phenolic Release Capacity, Volatile Profile and Color Property of Blueberry Pomace Powders at Multi-Grinding Scales. Foods 2026-09-28. DOI: 10.3390/foods15193468. 原著ライセンス:CC BY.