この研究は、アメリカ、オーストリア、クロアチアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的:食べた量を正確に知るための道具を作る

人が何をどれだけ食べたかを正確に把握することは、栄養と健康の関係を調べる研究や、栄養指導の場面で重要です。食事を毎回はかりで量るのが最も詳しい方法ですが、いつも実施できるわけではありません。そのため、前日に食べたものを聞き取る「24時間思い出し法」などの調査で、量の異なる料理の写真を見せ、自分が食べた量に近いものを選んでもらう方法がよく使われます。こうした写真集は「フードフォトアトラス」と呼ばれます。

この写真集は、対象となる人々が普段食べている料理や、その地域の食文化を反映していることが望まれます。クロアチアの料理は、沿岸部と内陸部で異なる歴史的影響を受け、地域ごとに多様です。研究チームによると、クロアチアでは子ども向けの料理写真資料はあったものの、大人向けで精度が検証されたものはありませんでした。そこで著者らは、クロアチアの伝統料理を収めた成人向けの写真集を作り、その写真で料理の量をどの程度正確に見積もれるかを確かめることを目的としました。

写真集の作り方と検証の方法

研究チームは、クロアチア政府観光局が定める食文化の地域区分に沿って、ダルマチア、イストラ・クヴァルネル、スラヴォニア、リカ、中央・北部クロアチアの各地域の料理20品に、伝統的なデザート5品と、東欧・バルカン地域に由来しクロアチアでよく食べられている料理5品を加えた計30品を選びました。

写真に写す量は、18〜64歳の成人2002人が参加した全国的な食品摂取調査のデータをもとに決めました。料理ごとに、実際に食べられていた量の分布から、少ない方から5%、35%、65%、95%にあたる量(パーセンタイル)を選び、A〜Dの4段階の写真を用意しました。ただし、計算上の量では「魚1と3分の2尾」のような不自然な盛り付けになる一部の料理は、家庭などで実際に出される形に近づくよう重さを調整しています。料理は同じ白い皿や透明なボウルに盛り付け、一定の条件で撮影されました。

検証では、110人の参加者が3日間にわたり研究室を訪れました。各料理について、写真の4段階の量に加えて、その間や前後にあたる量も含めた12通りの量を実際に盛り付けて並べました。参加者は目の前の料理を見て、「Aより少ない」「A」「AとBの間」「B」……「D」「Dより多い」という9つの選択肢から最も近いものを選びました。研究チームは、実際の重さと参加者の見積もりを比べ、差の大きさや向き、量の大小の順序がどれだけ保たれているか、偶然の一致を差し引いてもどの程度一致しているかなど、複数の観点から評価しました。

主な結果:多くの料理で高い一致、形の定まらない料理は難しい

論文によると、30品すべてで、実際の量と見積もった量の間には強い関連が見られました。つまり、参加者は多い盛り付けを多く、少ない盛り付けを少なく見積もる傾向をおおむね保っていました。偶然の一致を考慮した一致度の指標でも、30品のうち29品で「ほぼ完全な一致」、残る1品(スラヴォニア地方の肉の煮込み「チョバナツ」)で「かなりの一致」と判定されました。

見積もりの当たり外れは、9つの選択肢を1から9までの段階に置き換えて判定されました。実際に出された量も、隣り合う写真の重さの差をもとにした境界で同じ9段階のどこかに割り当てられ、参加者の選択がそれと同じ段階なら「正しい」、1段階ずれていれば「隣接」、それ以上ずれていれば「大きく外れた」見積もりとされます。たとえば実際の量が「B」の段階なのに「A」を選んだ場合、間に「AとBの間」をはさむため2段階のずれとなり、大きく外れた見積もりに数えられます。

この基準で正しく選べた割合は料理によって異なり、30品中20品では半数を超える参加者が正しい段階を選びました。グリルした魚とフダンソウ、肉料理「チェヴァピ」、プラム入りの団子、パンケーキでは、正しく選んだ人が8割を超えています。一方、大きく外れた見積もりの割合は、料理によって0%から31%まで幅がありました。

見積もりの偏りも料理によって異なりました。タコとジャガイモの蒸し焼き、イカのリゾット、魚の煮込み「フィシュ」、チョバナツなどでは実際より少なく見積もられ、サワークリーム添えのカッテージチーズや燻製肉入りの豆の煮込みなどでは多く見積もられる傾向が報告されました。著者らは、これらの料理に共通するのは、決まった形を持たない料理である点だと指摘しています。これに対し、一つずつ数えられる食材を含む料理や量の少ない盛り付けでは、見積もりのばらつきが小さい傾向がありました。参加者自身の感想でも、カッテージチーズ、乾燥ソーセージ「クーレン」、フィシュ、スープ「プレジュガナ・ユハ」は、約2〜3割の人が見積もりにくいと答えています。

この研究が示すこと

研究チームは、これらの結果が、クロアチアの成人が伝統料理の量を見積もるための道具として、この写真集の妥当性を支持するものだと結論づけています。地域の食文化に合わせて作られ、実際の料理と比べて精度が確かめられた写真集が用意されたことは、クロアチアの人々の食事内容を把握するための手がかりになります。同時に、煮込みのように形の定まらない料理では写真による見積もりがずれやすいことも示され、料理の性質によって見積もりやすさが異なることが浮かび上がりました。

著者:Ivana Rumbak(Laboratory for Nutrition Science, Department of Nutrition, Food Quality and Safety, University of Zagreb Faculty of Food Technology and Biotechnology)、Ana Ilić(Laboratory for Nutrition Science, Department of Nutrition, Food Quality and Safety, University of Zagreb Faculty of Food Technology and Biotechnology)、Tea Knezović(Laboratory for Nutrition Science, Department of Nutrition, Food Quality and Safety, University of Zagreb Faculty of Food Technology and Biotechnology)、Ana Jurčić(Laboratory for Nutrition Science, Department of Nutrition, Food Quality and Safety, University of Zagreb Faculty of Food Technology and Biotechnology)、Martina Pavlić(Centre for Food Safety, Croatian Agency for Agriculture and Food)、Lidija Šoher(Sub-Department of Nutrition, Department of Food and Nutrition Research, Faculty of Food Technology Osijek, Josip Juraj Strossmayer University of Osijek)、Daniela Cacic Kenjeric(Sub-Department of Nutrition, Department of Food and Nutrition Research, Faculty of Food Technology Osijek, Josip Juraj Strossmayer University of Osijek)、Jasna Pucarin‐Cvetković(Department of Environmental and Occupational Health and Sports Medicine, Andrija Štampar School of Public Health, School of Medicine, University of Zagreb)、Darja Sokolić(Centre for Food Safety, Croatian Agency for Agriculture and Food)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ivana Rumbak, Ana Ilić, Tea Knezović, et al. Development and validation of a food photography atlas for portion size estimation of traditional Croatian dishes in adults. Frontiers in Nutrition 2026-10-07. DOI: 10.3389/fnut.2026.1956906. 原著ライセンス:CC BY.