日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Physical Activity and Nutrition

ライセンス: CC BY-NC 2.0 対象: 公開論文 確認元: Europe PMC

アスリートにとって「食べる量」は競技力を支える土台のひとつと考えられています。トレーニングで消費したエネルギーをきちんと食事で補えているかどうかは、コンディション管理の観点からたびたび話題になるテーマです。今回紹介するのは、日本人男性のサッカー選手、長距離走選手、ロードバイク選手を対象に、実際のエネルギー摂取量と消費量、そして炭水化物・タンパク質・脂質のバランスを調べた研究です。

この研究では、複数のチームに所属するサッカー、長距離走、ロードバイクの男性選手90人を対象に、トレーニングのある日と休養日の1日ずつを調査期間として設定しました。エネルギーやたんぱく質・脂質・炭水化物の摂取量は、食事の写真と食事記録をもとに評価されています。一方エネルギー消費量は、練習に関するアンケートをもとに、メッツ(METs)や身体活動レベル(PAL)という指標を用いて算出されました。そして「エネルギー摂取量からエネルギー消費量を差し引いた値」として、エネルギーバランスが計算されています。

研究でわかったこと

結果として、トレーニング日のエネルギーバランスの中央値(25〜75パーセンタイル)は、いずれの競技でもマイナスとなりました。具体的には、サッカーで-767(-1,079〜98)kcal/日、長距離走で-367(-907〜169)kcal/日、ロードバイクで-948(-2,577〜329)kcal/日という値が示されています。つまり、練習のある日は消費したエネルギーに対して摂取したエネルギーが不足している傾向がみられたということです。

また、1日あたりの炭水化物摂取量の中央値は、体重1kgあたりでサッカーが5.0(4.3〜6.2)g、長距離走が6.4(5.2〜7.1)g、ロードバイクが8.3(6.6〜10.0)gでした。論文では、トレーニング時間を考慮すると、この炭水化物摂取量はアスリート向けの推奨量と比べて不足している、あるいは不足する傾向にあると報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、日本人男性のサッカー選手、長距離走選手、ロードバイク選手という特定の集団を対象に、ある一時点のトレーニング日・休養日それぞれ1日分のデータをもとに評価したものです。エネルギー消費量は実測ではなく、練習に関するアンケートとメッツ・身体活動レベルという指標を用いた計算によって推定されている点にも留意が必要です。研究チームは、こうした結果を今後の栄養サポート戦略の検討に役立てるべきだとしています。一つの研究であり、これだけで全てのアスリートに当てはまる結論が確定したわけではない点は念頭に置いておくとよいでしょう。

まとめ

今回紹介した研究では、日本人男性のサッカー選手、長距離走選手、ロードバイク選手において、トレーニング日のエネルギーバランスがマイナスとなる傾向がみられ、炭水化物摂取量も推奨量と比べて不足しているか、その傾向があることが示唆されました。競技や個人によって必要なエネルギー・栄養素の量は異なるため、こうした知見は今後の栄養サポートのあり方を考える一つの材料として捉えるとよさそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):複数チームにおける日本人男性サッカー選手、長距離走選手、ロードバイク選手のエネルギー摂取量と消費量(フィジカル・アクティビティ・アンド・ニュートリション・2026年06月)

著者:Naoki Nakamura(Health Innovation Business Division, Ezaki Glico Co., Ltd., Osaka, Japan)、Satoko Ozawa(Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan)、Soshi Tokiwa(Health Innovation Business Division, Ezaki Glico Co., Ltd., Osaka, Japan)、Kazuya Yamamoto(Research and Development Department, Ezaki Glico Co., Ltd., Osaka, Japan)、Kei Yui(Health Innovation Business Division, Ezaki Glico Co., Ltd., Osaka, Japan)、Rikako Yoshitake(Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan)、Taketo Yamaguchi(Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan)、Kazuki Kioka(Graduate School of Comprehensive Human Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan)、Naomi Omi(Institute of Health and Sport Sciences, University of Tsukuba, Tsukuba, Japan)