著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

胆石症(たんせきしょう)は、胆のうや胆管に石ができる、比較的よくみられる消化器の病気です。世界的に患者数が増えているとされ、医療費の面でも負担が大きいことが知られています。近年、食事の内容が体内の炎症と関わり、それが胆石症の発症とも関連するのではないかという見方があります。今回紹介するのは、食事がどれくらい炎症を起こしやすい傾向にあるかを数値化した指標と、胆石症のリスクとの関連を、大規模な追跡調査データから調べた研究です。

研究でわかったこと

この研究では、「エネルギー調整済み食事性炎症指数(E-DII)」という指標が使われています。これは、食事全体がどの程度炎症を促す方向に働きやすいかを表す指標で、摂取エネルギー量の違いによる影響を調整して算出されているのが特徴です。研究チームは、英国の大規模な追跡調査「UKバイオバンク」に参加した40〜69歳の成人202,129人を対象に、24時間の食事内容の聞き取り調査からE-DIIのスコアを算出しました。そのうえで、E-DIIのスコアの高さ(4つのグループに分けています)と、その後の胆石症の発症との関連を、他の要因の影響を統計的に調整したうえで解析しています。

その結果、E-DIIが最も低いグループと比べて、最も高いグループでは胆石症のリスクが約1.19倍(95%信頼区間 1.11〜1.28)高いという関連が示されました。ただし、その関係は一直線に比例して増えていくものではなく、非直線的なパターンを示したと報告されています。具体的には、E-DIIがある一定の低い値を下回る範囲ではリスクが増加し、そこからやや上昇した範囲ではリスクがわずかに低下し、さらに指標が高くなる範囲では再びリスクが増加し続けるという、複雑な曲線を描いていたとされています。また、対象を性別や年齢などで分けたサブグループ解析や、他の解析手法を用いた検証でも、おおむね同様の傾向が確認されたとしています。なお、E-DIIと胆石症による死亡との間には、関連は見られなかったとのことです。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、多数の人を長期間追跡して病気の発症との関連を調べる「前向きコホート研究」という手法によるものです。こうした研究は、食事の傾向と病気の発症との「関連」を示すことはできますが、それだけで「この食事が胆石症を引き起こす」という因果関係を証明するものではない点には注意が必要です。また、対象はUKバイオバンクに参加した成人であり、食事の記録も限られた回数の聞き取りに基づいています。今回の要旨からは、これ以上の詳しい限界点は示されていませんが、一つの研究の結果であり、これのみで結論が確定したわけではないことを念頭に置いて読むとよいでしょう。

まとめ

この研究では、食事の炎症を起こしやすさを示すE-DIIのスコアが高い人ほど、胆石症のリスクが高くなる傾向が示され、その関連は非直線的なパターンを示したと報告されています。研究チームは、食事内容を見直すことが胆石症の予防に役立つ可能性を示唆しており、今後さらに的を絞った研究が必要だとしています。日々の食事と体の炎症、そして胆石症との関係を考えるうえで、興味深い手がかりを与えてくれる研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):エネルギー調整済み食事性炎症指数と胆石症リスクとの関連:前向きコホート研究(フロンティアーズ・イン・パブリックヘルス・2026年07月)

著者:Jiayue Zhu(Faculty of Military Health Service, Naval Medical University, Shanghai, China)、Yinghong Zhai(Clinical Research Unit, School of Medicine, Shanghai Ninth People's Hospital Affiliated to Shanghai JiaoTong University, Shanghai, China)、Lei Yuan(Faculty of Military Health Service, Naval Medical University, Shanghai, China)、Suming Dai(Faculty of Military Health Service, Naval Medical University, Shanghai, China)、Fangyuan Hu(Faculty of Military Health Service, Naval Medical University, Shanghai, China)、Xu Liu(Faculty of Military Health Service, Naval Medical University, Shanghai, China)