五月の風が爽やかに吹き抜けるこの季節、茶摘みの便りとともに新茶が店頭に並び始めます。香り高い一杯を楽しみながら、ふと「レモンを添えると体に良いのでは?」と思ったことはないでしょうか。実はこの組み合わせ、鉄分の吸収という観点から見ると、なかなか興味深い科学が隠れています。
この時期に注目したい栄養素:鉄
春から初夏にかけては、新生活の疲れや気温の変化で体が鉄分不足を感じやすい時期でもあります。最新の「日本人の食事摂取基準」(厚生労働省)によれば、成人女性(月経あり)の鉄の推奨量は1日10.5mgとされており、多くの女性が摂取不足になりやすい栄養素のひとつです。詳細は厚生労働省の最新資料をご確認ください。
鉄には大きく分けて二種類あります。肉や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜・豆類・穀物に含まれる「非ヘム鉄」です。非ヘム鉄は吸収率がヘム鉄より低い傾向があり、一緒に食べるものによって吸収率が大きく変わることが知られています。新茶に含まれる「タンニン」はポリフェノールの一種で、鉄と結合しやすい性質を持ち、非ヘム鉄の吸収を妨げる可能性があると考えられています。一方、ビタミンCには非ヘム鉄の吸収を助ける働きがあるとされており、ここにレモンの出番があります。
おすすめ食品とその数値データ
注目したいのがレモン(全果・生)のビタミンC含有量です。日本食品標準成分表(八訂)の実測値によると、レモン(全果・生)は100gあたり100mgものビタミンCを含んでいます。エネルギーは43kcal、食物繊維も4.9g(100gあたり)と豊富です。
料理やドリンクへの活用にはレモン果汁(生)も便利です。レモン果汁(生)は100gあたりビタミンCが50mg、エネルギーは24kcalと低カロリー。少量でも十分なビタミンCを摂り込めるため、飲み物への絞り入れに重宝します。
一方、缶タイプの飲料は注意が必要です。缶チューハイ・レモン風味は100gあたりビタミンCが0mgで、鉄も0mg(日本食品標準成分表(八訂)実測値)。レモンの名を冠していても、缶チューハイ・レモン風味からは鉄吸収を助けるビタミンCは期待できません。また、アルコール自体が栄養素の代謝に影響を与えることも知られているため、鉄補給の観点からは生のレモンや果汁を選ぶのが賢明です。
毎日の食事への取り入れ方
新茶と鉄分をうまく共存させるには、少しタイミングを工夫するだけで日常に取り入れやすくなります。
- 食事中の新茶は控えめに:鉄を多く含む食品(豆腐、ほうれん草、レバーなど)を食べるときは、新茶は食後30分〜1時間後にずらすと、タンニンによる吸収阻害を和らげられると考えられています。
- レモン果汁を食事にプラス:非ヘム鉄を含む食品を食べる際に、レモン果汁(生)をドレッシングとして使ったり、料理に絞ったりすることで、ビタミンCを同時に摂取できます。
- 丸ごとレモンの活用:レモン(全果・生)はスライスして水に浮かべる「レモン水」や、薄切りを蜂蜜漬けにして温かいお湯で割るなど、新茶とは別のタイミングで取り入れるのがおすすめです。
- 缶チューハイではなく生果汁を:ビタミンCによる鉄吸収サポートを期待するなら、缶チューハイ・レモン風味ではなく、生のレモン果汁(生)やレモン(全果・生)を選びましょう。
まとめ
新茶の香りを楽しみながらも、鉄分の吸収という視点を少し意識するだけで、毎日の食事はより豊かになります。タンニンたっぷりの新茶と鉄は食事のタイミングをずらし、レモンのビタミンCは鉄を含む食品と一緒に摂る——そんなちょっとした工夫が、体をより元気に保つヒントになるかもしれません。旬の恵みをうまく組み合わせながら、この季節ならではの食の楽しみを見つけてみてください。
※本記事は日本食品標準成分表(八訂)のデータ等をもとに作成しました。