スーパーの牛乳売り場には、国産のものだけでなく海外から輸入された牛乳が並んでいることがあります。産地が違えば、牛の飼育方法や気候、流通の過程も異なるため、同じ「牛乳」でも中身に違いがあるのではないか——そんな疑問を出発点に行われた研究が、学術誌「フードサイエンスオブアニマルリソーシズ」で紹介されています。今回はこの論文の内容を、一般読者向けにわかりやすく紹介します。
中国市場に並ぶ牛乳を産地別に比較
この研究では、中国国内で販売されている市販の液状牛乳16サンプルが対象とされました。内訳は、中国産が6サンプル、西ヨーロッパ産が5サンプル、オーストラリア・ニュージーランド産が5サンプルです。これらについて、たんぱく質や脂質などの主要栄養素、ミネラル、ビタミン、脂肪酸の組成、そして風味などの官能特性が調べられました。
研究でわかったこと
分析の結果、中国産の牛乳は、脂肪、亜鉛、ヨウ素、ビタミンE、ビタミンB3の含有量が、西ヨーロッパ産やオーストラリア・ニュージーランド産の牛乳より高い傾向が示されたと報告されています。一方で、輸入牛乳(西ヨーロッパ産・オーストラリア/ニュージーランド産)はビタミンB2が多い傾向が見られたとされています。
脂肪酸の組成にも違いが見られたと報告されています。中国産牛乳はn-6系脂肪酸が豊富であったのに対し、輸入牛乳はn-3系脂肪酸が多く、n-3とn-6のバランス(n-3/n-6比)がより望ましいとされる方向に傾いていたとのことです。
さらに、風味に関する官能評価では、輸入牛乳のほうが「牛くさい」風味や「茶」のような風味がより強く感じられたことが示されています。
研究者らは、こうした違いの主な要因として、飼育方式の違いを挙げています。中国では配合飼料(TMR=トータル・ミックスド・レーション)を用いた舎飼いによる生産が中心である一方、西ヨーロッパやオーストラリア・ニュージーランドでは牧草地での放牧を基盤とした飼育が行われていることが背景にあるとされ、これに加えて加工方法やサプライチェーン(流通経路)の違いも影響していると考察されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、中国市場で販売されている合計16サンプルという限られた数の牛乳を対象にした分析であり、産地ごとの傾向を示すものではありますが、すべての牛乳に当てはまる結論とは言えません。また、今回示された成分や風味の違いは、あくまで栄養面・官能面の特徴の比較であり、どちらの牛乳が健康に良い・悪いといった優劣を断定するものではない点に注意が必要です。研究者らは、この結果が乳製品の違いを理解する材料となり、中国の消費者が購入時に情報を得たうえで選択する助けになることを期待しているとしています。
まとめ
今回紹介した研究では、中国市場で販売されている牛乳を産地別に比較したところ、脂肪・ミネラル・ビタミンの含有量や脂肪酸の組成、風味に違いが見られたことが報告されました。こうした違いは、牛の飼育方式の違いなどが背景にあると考察されています。牛乳の産地による違いに関心のある方にとって、興味深い視点を提供してくれる研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:中国市場における世界各生産地域由来の市販牛乳の栄養成分、脂肪酸プロファイル、官能特性(フードサイエンスオブアニマルリソーシズ・2026年07月)