著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Frontiers in Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
チャンチン(Toona sinensis)は、若葉が食材や伝統的な薬用食品として使われてきた植物で、ポリフェノールやフラボノイドを豊富に含むことが知られています。近年、これらの成分には炎症を抑える可能性があるとされていますが、乾燥や発酵といった「加工方法」の違いが、その機能性にどう影響するのかは、これまであまり詳しく調べられていませんでした。今回紹介する研究では、潰瘍性大腸炎(UC)という慢性の腸の炎症性疾患に対して、チャンチンの葉の加工方法を変えることで効果に違いが出るのかを、マウスを使った実験で検証しています。
潰瘍性大腸炎は安全な食事による介入方法がまだ限られている疾患とされており、身近な植物性食品からのアプローチが模索されている分野です。
研究でわかったこと
研究チームは、チャンチンの葉を熱風で乾燥させたもの(TL)と、紅茶と同じ製法で加工した葉茶(TLT)を用意し、DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)という物質で大腸炎を引き起こしたマウスに、それぞれ飲み水として与えて比較しました(1群あたり8匹)。濃度は20mg/mL、体重換算で1日あたり約3.33g/kgとされています。また比較対象として、キームン紅茶(祁門紅茶)を与えた群も設けられました。
その結果、TLとTLTのいずれも、DSSによって引き起こされた大腸炎の症状を軽減したと報告されています。特にTLTはTLよりも有意に強い効果を示し(p<0.05)、キームン紅茶と同程度の効果があったとされています。具体的には、TLTを与えたマウスでは大腸の組織の状態が改善し、細胞同士の結びつきに関わるタンパク質(ZO-1、Occludin)の量が増え、炎症に関わる物質(IL-1β、TNF-α)が抑えられたことが確認されています。これらは腸のバリア機能が保たれている状態を示す指標とされています。
さらに成分分析では、紅茶と同じ加工を行うことで、チャンチンの葉に含まれる総フラボノイドやポリフェノールの量が増加していたことがわかりました。そしてこれらの成分量は、大腸炎への保護的な指標と強い相関(相関係数の絶対値が0.6超、p<0.01)を示したとされています。加えて、腸内細菌叢を調べたところ、TLTを与えた群では細菌の多様性が回復し、短鎖脂肪酸を作り出すことで知られるAkkermansiaやOdoribacterといった菌の増加がみられたと報告されています。代謝物を網羅的に調べる解析(メタボロミクス)では、ケンフェロールやケルセチンの配糖体を含む23種類の抗炎症性代謝物が見つかったとされ、これらの代謝物と腸内細菌、保護的な指標との間に有意な相関関係があることも示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、マウスを用いた動物実験の結果であり、ヒトでの効果を直接示すものではない点に注意が必要です。また、あくまで一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではありません。今回の結果は、チャンチンの葉を紅茶のように加工することで機能性食品としての価値を高められる可能性を示す基礎的な知見と位置づけられており、今後さらなる検証が必要な段階のものと考えられます。
まとめ
この研究では、チャンチンの葉を紅茶と同じ製法で加工すると、熱風乾燥した葉に比べてフラボノイドなどの含有量が増え、DSSによる大腸炎モデルのマウスにおいて、腸のバリア機能の維持や炎症の抑制、腸内細菌叢のバランス回復といった変化がみられたと報告されています。伝統的な食材の加工方法を工夫することで、その機能性を高められる可能性を示唆する研究といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):紅茶加工されたチャンチン(Toona sinensis)葉はフラボノイドの富化と腸内細菌叢の調整によりDSS誘発潰瘍性大腸炎マウスを改善する(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)
著者:Mengdi Wang(Department of General Surgery, The First Affiliated Hospital of Fuyang Normal University, Fuyang, China)、Shuolei Xu(School of Biology and Food Engineering, Fuyang Normal University, Fuyang, China)、Jinyi Liu(The First Clinical Medical College, Bengbu Medical University, Bengbu, China)、Ruojue Xu(School of Biology and Food Engineering, Fuyang Normal University, Fuyang, China)、Boyu Du(School of Biology and Food Engineering, Fuyang Normal University, Fuyang, China)、Guangshun Lu(School of Biology and Food Engineering, Fuyang Normal University, Fuyang, China)、Guohuo Wu(School of Biology and Food Engineering, Fuyang Normal University, Fuyang, China)