スマートフォンやタブレットの普及とともに、子どもや青少年の近視は世界的に大きな健康課題となっています。近視の原因としては、屋外活動の時間や近業(近くを見る作業)の多さなどがよく知られていますが、近年は食生活、特に飲み物の種類との関連にも研究者の関心が向けられています。今回紹介する論文は、中国・上海で行われた大規模な追跡調査をもとに、清涼飲料水やジュースなど市販の飲料の摂取頻度が、子どもの視力や眼の状態とどのように関連していたかを調べたものです。

研究チームは2021年から2024年にかけて、上海の子どもと青少年5199人を対象に4年間のコホート研究を実施しました。参加者には毎年1回、飲料の摂取頻度を尋ねる半定量的な食物摂取頻度調査票(FFQ)に回答してもらい、あわせて裸眼視力、屈折度(近視・遠視の度合いを示す指標)、眼軸長(眼球の奥行きの長さで、近視が進むと伸びるとされる指標)を測定する眼科検査を行いました。調べた飲料は、糖分を加えた飲料(SSB)、糖を加えていない飲料(NSSB)、果物・野菜ジュースなど複数の種類に分類されています。

研究でわかったこと

解析の結果、調査開始時点で近視と判定された子どもの割合は37.9%でしたが、2024年の調査終了時には65.6%まで上昇していました。近視のある子どもは、100%および非100%の果物・野菜ジュースを飲む頻度が低く、炭酸飲料やミルクティー飲料を飲む頻度が高い傾向がみられたと報告されています。

一般化推定方程式(GEE)という統計手法を用いた縦断的な分析では、100%および非100%の果物・野菜ジュースの摂取頻度が高い子どもほど、近視になるオッズ(確率に関連する指標)が低く、屈折度(近視が弱いことを示す方向)が保たれやすく、眼軸長の伸びも小さい傾向と関連していたとされています。反対に、炭酸飲料、ミルクティー飲料、そして糖を加えていない飲料(NSSB)の摂取頻度が高い子どもほど、近視になるオッズが高く、屈折度が近視方向に変化しやすく、眼軸長の伸びも大きい傾向と関連していたと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、飲料の摂取頻度という食生活の一側面と、近視や眼軸長といった視覚関連の指標との「関連」を示したものであり、飲料を飲むことが近視を「引き起こす」あるいは「予防する」という因果関係を直接証明したものではない点に注意が必要です。あくまで一つの地域・集団を対象とした観察研究であり、この結果だけで結論が確定したわけではありません。近視には遺伝的要因や屋外活動時間、近業時間など多くの要因が関わることが知られており、飲料の摂取頻度はそうした要因の一つとして捉えるのが妥当でしょう。

また、この研究は上海の子どもと青少年を対象としたものであり、対象者の年齢層や生活環境、飲料の分類方法などの詳細は元の論文で確認する必要があります。飲料の種類によって関連の方向が異なっていた点は興味深く、今後さらに詳しい検証が期待される分野といえそうです。

まとめ

上海で行われた4年間の追跡調査から、果物・野菜ジュースの摂取頻度が高いことは近視の進行が緩やかであることと関連し、炭酸飲料やミルクティー飲料、糖を加えていない飲料の摂取頻度が高いことは近視や眼軸長の伸びと関連していたことが示されました。飲料の種類によって子どもの視覚関連指標との関連の仕方が異なるという結果は、今後の研究や食生活を考えるうえでの一つの参考情報となりそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:市販の非アルコール飲料の摂取は、子供と青少年における屈折変化、眼軸長変化および近視と関連する(ニュートリエンツ・2026年07月)