禁煙、節度ある飲酒、適度な運動、バランスの良い食事――こうした「健康的な生活習慣」は心臓病のリスクを下げると広く言われています。しかし、その効果は体重が標準の人と肥満の人とで同じように現れるのでしょうか。今回紹介するのは、中国の成人8,787人を対象に、生活習慣と冠動脈疾患(CAD、心臓を養う血管が詰まったり狭くなったりする病気)の発症リスクとの関連を、体重の状態別に調べた前向きコホート研究です。

どんな研究?

研究チームは、健康診断センターを受診した中国人成人8,787人を対象に追跡調査を行いました。喫煙、飲酒、身体活動、食事の4項目をもとに「健康的な生活習慣スコア」(0~4点、点数が高いほど健康的)を作成し、参加者を「正常体重(BMI 18.5以上24.0未満)」と「肥満(BMI 28以上)」のグループに分けました。そのうえで、生活習慣スコアと冠動脈疾患の発症との関連を、統計的な手法(コックス比例ハザードモデル)を用いて解析しています。

わかったこと

追跡期間の中央値は7年間で、この間に476件の冠動脈疾患が発生しました。全体としては、生活習慣スコアが1点上がるごとに冠動脈疾患のリスクが24%低い(ハザード比0.76、95%信頼区間0.68~0.86)という関連が見られました。

ただし、体重の状態別に分けて見ると様子が異なりました。正常体重の人では、生活習慣スコアが高いほどリスクが低いという関連が統計的に意味のあるものとして示されました(ハザード比0.75、95%信頼区間0.65~0.86)。一方、肥満の人では同様の傾向は見られたものの、統計的に有意とは言えませんでした(ハザード比0.85、95%信頼区間0.67~1.07)。なお、生活習慣スコアと体重状態との「交互作用」(組み合わせによって効果の出方が変わるかどうか)については、統計的に有意な差は確認されませんでした(交互作用のp値=0.464)。

また、生活習慣と体重状態を組み合わせて見た解析では、肥満でかつ不健康な生活習慣の人が、最もリスクが高いグループ(ハザード比1.58、95%信頼区間1.13~2.21)であったと報告されています。

この研究を読むときの注意点

この研究は観察研究であり、生活習慣と冠動脈疾患リスクとの間に「関連がある」ことを示すものであって、「生活習慣を改善すれば必ずリスクが下がる」といった因果関係を証明するものではありません。また、著者ら自身も、一部のサブグループ解析では統計的な検出力(差を見つけ出す力)が限られていた可能性を認めており、今回の結果は仮説を提示するものであって、より大規模な前向き研究による確認が必要だとしています。体重状態による違いについても、交互作用そのものは統計的に有意ではなかった点は留意しておきたいところです。

まとめ

今回紹介した研究では、健康的な生活習慣(禁煙・節度ある飲酒・適度な運動・バランスの良い食事)を持つことは、正常体重の人において冠動脈疾患リスクの低さと関連していたと報告されています。一方で肥満の人では同様の関連は統計的に有意ではなく、体重状態によって生活習慣とリスクとの関係に違いがある可能性が示唆されています。ただしこれは一つの観察研究の結果であり、結論が確定したわけではない点に留意しつつ、今後のさらなる研究の進展が注目されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:健康的な生活習慣と冠動脈疾患リスクの関連は体重状態によって異なる:前向きコホート研究(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年07月)