過酷な訓練をこなす軍人や、厳しい競技に挑むアスリートは、どのくらいのエネルギーを消費しているのでしょうか。そしてその消費量に見合った食事量は、どのように決めればよいのでしょうか。人が1日に必要とする栄養量は、日々の活動や職務内容によって大きく変わります。特に高い身体的負荷がかかる職業や活動に従事する人々を対象とした研究は、その人たちに適したエネルギー・栄養の必要量を考えるうえで役立ちます。今回紹介する研究は、ポーランドの特殊部隊員を対象に、訓練時のエネルギー消費量を実際に測定し、それを1日分の食料配給(レーション)の設計にどう活かせるかを検討したものです。対象となった軍人たちは、国内外でさまざまな任務を遂行しており、その身体的な負荷は厳しい競技スポーツの選手に匹敵する可能性があるとされています。

研究でわかったこと

この研究では、ポーランドの特殊部隊「GROM」と、憲兵隊の特殊部門(MP)に所属する軍人を対象に調査が行われました。研究の目的は大きく2つです。1つ目は、2つの異なる特殊部隊における訓練時のエネルギー消費量を測定し、任務にかかる身体的負荷を評価すること。2つ目は、その1日あたりのエネルギー消費量をもとに、1日分の食料配給が持つべきエネルギー量・栄養価を検討し、特殊部隊向けの集団給食に応用できる栄養基準の案を作ることです。

エネルギー消費量の測定には、心拍数のモニタリングと心拍変動の解析という手法が用いられました。実際に野外訓練を行った際の1日あたりの平均エネルギー消費量は、GROM隊員で4175±723.7kcal、憲兵隊特殊部門(MP)の隊員で5014.8±666.3kcalであったと報告されています。両部隊とも非常に高い数値ですが、部隊間で一定の差もみられたようです。

これらの結果をもとに、研究チームは特殊部隊員が安全かつ十分な栄養を確保できるように、1日分の食料配給のエネルギー量について、5〜10%の安全マージンを加えたうえで4400kcal以上とすることを提案しています。さらに、特に訓練の強度が高まる時期にはエネルギー消費量がさらに増加することを踏まえ、その増加分を平均して約500kcalと見積もり、通常時の食料配給にこの500kcalを追加することを提案しています。こうした結果に基づいて、ポーランド特殊部隊員のための基本的な栄養基準の案がまとめられたとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、特定の国の特殊部隊2部隊を対象に、心拍数モニタリングという手法でエネルギー消費量を推定したものです。示された数値や提案された栄養基準は、あくまでこの研究で調査された集団・訓練条件のもとで得られたものであり、すべての軍人や身体活動量の高い職業に一律に当てはまるとは限りません。また、この記事で紹介したのは要旨に基づく概要であり、測定方法の詳細や統計的な検討の妥当性などについては、原論文本文を確認する必要があります。一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではない点にも留意してください。

まとめ

今回紹介した研究は、ポーランドの特殊部隊員を対象に、心拍数モニタリングを用いて訓練時のエネルギー消費量を実測し、GROMで平均4175kcal、憲兵隊特殊部門で平均5015kcalという1日あたりの消費量を報告しました。この結果をもとに、1日分の食料配給のエネルギー量は安全マージンを含めて4400kcal以上とし、訓練強度が高まる際にはさらに500kcalを追加するという提案がなされています。過酷な身体活動を伴う職業における栄養計画を考えるうえで、参考となる知見の一つといえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:1日分の食料配給のエネルギー・栄養価計画の指標としてのポーランド特殊部隊のエネルギー消費量評価(ニュートリエンツ・2026年07月)