日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Discover Sustainability

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

家庭から出る食品ロスを減らすために、行政などによる情報発信は広く使われています。しかし、こうした情報を受け取った人がその内容をどう解釈し、どのように心の中で受け止めているのかは、これまであまり調べられてこなかったと論文は指摘しています。

日本では2023年度に464万トンの食品ロスが発生し、そのうち家庭からは233万トンでした。著者によると、事業者からの食品ロスは規制によって目標より早く半減した一方で、家庭からの食品ロスは減りにくい状況が続いています。この研究は、伝え方の異なるメッセージが受け手に異なる種類の反応を引き起こすのか、そしてメッセージの違いが、本人が回答する食品ロス予防の取り組みや考え方を変えるのかを調べました。

どのように調べたか

著者は日本の消費者を対象に、オンライン調査の形で実験を行いました。1回目の調査には2069人が回答し、約5週間後の2回目の調査には959人が回答しました。参加者は無作為に4つのグループに分けられ、それぞれ異なる情報を読みました。食品ロスの処理に税金が使われていることを示す「税負担」の情報、世界の飢餓と結びつけた「飢餓」の情報、家計で失われるお金を示す「家計コスト」の情報、そして日本の食品ロスに関する一般的な情報(比較用)の4種類です。

情報を読んだ後、参加者は自分の受け止め方を自由に文章で書きました。著者らはこの回答を、人が他者のための行動へ向かう心の動きを段階的に説明する「規範活性化理論」に基づいて5つに分類しました。5つとは、はっきりした反応がない段階、結果の重大さに気づく段階、責任が誰にあるかを考える段階、自分がすべきだという個人的な義務感が生じる段階、そして防衛的に反発する段階です。分類には2つの大規模言語モデル(AI)がそれぞれ独立に判定した結果を使い、最終的な判断は著者が文章を確認したうえで決めました。さらに、どの情報を読んだ人の回答かを伏せた状態で、著者が一部を数か月後に分類し直して確認しています。

なお、4種類の情報は実際の日本の政策広報で使われている内容をもとにしており、長さや数字の量などにも違いがあります。そのため論文では、結果を「特定の切り口」だけの効果ではなく、それぞれのメッセージ全体の効果として解釈すべきだとしています。

主な結果

メッセージの違いは、受け止め方の段階に影響していました。比較用の情報と比べて、「税負担」の情報では責任の所在を考える段階に当たる回答の確率が5.1ポイント、「飢餓」の情報では5.8ポイント高くなりました。一方、「家計コスト」の情報だけが、自分がすべきだという個人的な義務感が生じる段階の確率を4.5ポイント高めていました。

ところが、情報を割り当てたことそのものの効果を調べると、参加者が自己申告した食品ロス予防の取り組み、規範的な考え方、関連する政策への支持には、いずれのメッセージでも効果が見られませんでした。

約5週間後まで続いていた唯一の効果は、望ましい方向とは逆のものでした。「税負担」の情報を読んだグループでは、食品ロスを減らそうとする意欲が標準偏差の0.15分低くなっていました。著者は、これは外からの理由づけが本人の内側からの動機を弱めてしまう「動機のクラウディングアウト」と呼ばれる現象と整合的なパターンだとしつつも、その仕組み自体は直接検証していないと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、情報の伝え方が人々の受け止め方を変えても、本人が回答する日々の取り組みまでは変えなかったことを示しました。著者は、この「解釈の変化」と「実践の変化」の区別が、意図があっても行動につながりにくいという隔たりを理解する手がかりになり、家庭の持続可能性に関する情報発信を設計するうえで参考になると論じています。

著者:Tomomi Yamane(College of Sustainability and Tourism, Ritsumeikan Asia Pacific University, 1-1 Jumonjibaru, Beppu, Oita, 874-8577, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tomomi Yamane. How consumers process sustainability messages in a randomized two-wave experiment on household food waste reduction in Japan. Discover Sustainability 2026-10-06. DOI: 10.1007/s43621-026-04909-9. 原著ライセンス:CC BY.